すべての症例を掲載することが難しいため、一部を紹介します。
妊婦ケアのポイント
鍼灸は体に負担が少なく妊娠中でも安心して行える療法です。薬のように副作用がないので、妊娠期の体調不良やケアには最適です。体調と生活環境をしっかり確認した上で、適切なツボと適度な刺激量で施術を行っております。
初産婦 30代 群馬県/沼田市
むずむず脚症候群
動悸、息切れ
2015年3月(妊娠35週目)
特になし
妊娠中は、下腹部から内股にかけての血流が不安定になるために、脚がむずむずするような症状が出やすい。そこで、膝の内側にあるツボを使用して、内股の血流を促し脚全体に広げようと考えた。すると1回目の施術で症状が半分に落ち着き、2回目の施術で完全に症状が消えた。3回目で予防的な施術を行い治療を終えた。
陰谷(左右)、次髎(左)
薬が使いにくい妊娠期であるため、こうした症状をお産まで我慢し続けることを強いられてしまうことが多い。鍼灸治療は、血流改善を副作用なく促すことができるため、妊娠期のトラブルに対して安全に治療を行うことができる。「妊娠中のハリは危険」という誤解をして我慢している妊婦さんが少しでも減るように、一症例ずつ丁寧に積み重ねていきたい思う。[YFTS020315]
初産婦 30代 群馬県/伊勢崎市
背中の痛み、痔
時々腰痛(臀部痛)
2012年8月(妊娠28週目)
妊娠してから睡眠中に背中が痛くなり、そのため朝5時半頃に目が覚めてしまう。昼間の活動中の痛みは軽いが仰向けで寝ると痛みを感じる。また、妊娠してから痔になった。(写真:実際の患者様<許可を得て掲載>)
特になし
背中に触れながら痛みの中心を探したところ、胸椎の8番と9番の高さであることがわかった。仰向けで寝るとこの辺りが圧迫を受ける。そのことで可動域が制限され周辺筋肉の血行不良を起こしているのが痛みの原因と考えた。8番と9番の動きを改善させるために、膝の外側にあるツボを使った。痔に対しては、腕にある孔最(左)というツボを使用した。5週間後の来院時(2回目)に経過を尋ねたところ1回の施術で、背中の痛みと痔が解決したとのこと。
足の陽関(左右)、孔最(左)と孔最の近くの硬結部位(阿是穴)
選択したツボが的中し、1回の施術で著しい効果が得られたため通院の必要がなかった。その4週間後から再発、5週間後に来院することになったが、初回の来院時よりは症状は軽いとの話であった。体調が不安定になりやすい妊娠中にこのような成果は上々と言える。[YFYO110812]
初産婦 30代 群馬県
ばね指(弾撥指)
悪阻(つわり)
2012年7月(妊娠29週目)
2週間前から左手の中指を曲げ伸ばしする際にカクカクとひっかかるようになった。軽い痛みも伴う。整形外科で「ばね指」と診断された。「妊娠中だから仕方ない」ということで治療はしなかった。当院へは悪阻を治すために来院したが、悪阻と一緒にばね指も治療することになった。
特になし
ばね指で問題になっていることが多いのは、前腕の筋肉のこわばりである。指を動かす筋肉は前腕にあるため、腕の疲労が蓄積すると指に大きな負荷がかかってしまう。腕から指にかけて突っ張っている状態と考えられる。さらに、指、腕、肩、背中までを一つの運動システムとして考えると、これらの連動性に狂いが生じている。活法の技により、この連動性を回復させ、背中のツボで指の腱鞘の炎症を抑えようと試みた。1回の施術でカクカクが完全になくなり痛みもほぼ消失した。
挟脊胸椎4番付近
発症から2週間と新しい症状のため、その場で症状が消失した。活法によって筋肉の連動性を整え、鍼によるツボ刺激によって炎症を抑えるという発想で施術した。妊娠中のばね指は治療されずに経過だけを観察されるケースが多いだけに、このようにシンプルで副作用のない施術によって改善する事実は重要であると考えている。
[YFAO300712]
経産婦(2人) 30代 群馬県
尾骨(尾てい骨)周辺の痛み 腰痛 肩こり 浮腫(ふくらはぎ)
動悸 息切れ
2012年6月(妊娠22週目)
10年以上前から腰痛と肩こりに悩んできた。妊娠4ヶ月を過ぎた頃から右脚を地面に着いた瞬間に尾骨(尾てい骨)周辺に痛みが出るようになり、生活のあらゆる場面で尾骨周辺に痛みを感じるようになる。加えて、妊娠後には便秘(平均1回/5日)、ふくらはぎの浮腫が気になるようになった。
特になし
妊娠前からの問題(腰痛、肩こり)があるため、第一の全身のバランスを取ることを考えた。ある程度の調整を行ってから妊娠特有の問題に取り組もうと考えた。初回の施術では、下半身(臀部、股関節、膝、足首)のこわばりを取り、肩、背部のケアを補助的に行った。2回目の来院時(1週間後)には、体全身がスッキリとし、階段を登るのがラクになった。さらに、便通の改善がみられた(平均1回/5回→平均1回/2日)。ただ、尾骨周辺の痛みは、ほとんど変化が見られなかった(立位での前屈で痛みが出現)。2回目の施術では、臀部の筋肉を和らげると共に、仙腸関節の動きを回復させた。それでも尾骨周辺の痛みが改善しなかったので、胸椎の5番のこわばりに鍼をしたら、すぐさま痛みが消えた。
挟脊5番(尾骨周辺の痛みに対して)
改善しない尾骨の症状が、背部に視野を広げた途端解決したという例である。実際、このようなケースは珍しくなく、背部の問題が腰まで及んでいる例は多い。ここを見逃すとしつこい症状であるが、背部と腰部の関連性を知っておくと、あっさり解決することがある。
[YFKM020612]
経産婦(1人) 20代 群馬県
臀部痛(おしり痛)
悪阻(つわり) 動悸 息切れ
2008年5月(妊娠21週目)
4月初旬、子供(3歳)を寝かしつけていた時に右の臀部(おしり)の一点に痛みを感じた。軽い痛みだったため、気にすることなく過ごしていた。2週間後、(悪阻のために)休んでいた仕事を再開したのと同時に臀部の痛みが悪化し、寝返りの瞬間に激痛が走るようになった。来院時には、臀部全体と大腿部の側面から後面にかけて鈍い痛みを感じるようになっていた。
特になし
治療用ベッド上で激痛が生じないように、昇降時と姿勢を変える時には細心の注意を払った。初診の施術の直後、症状は7〜8割解消された。6日後に再び来院。痛みの程度が軽減し、激痛が走る動作の幅と回数が半分程度まで減っていた。肩こりが気になりだしたとの話が出たため、臀部痛と共に肩こりの治療も加えた。その結果、肩こりは緩解され、臀部痛はほとんど消失した(治療用ベッドの上で痛みを誘発する姿勢をとっても痛みが出現せず)。2回の施術で治療を終了した。
大腸兪(右)
動きの動作時に坐骨神経が刺激され痛みを誘発していたものと思われる。腰椎に問題を抱えていないケースでは、骨盤周辺の筋肉を和らげると痛みが緩解されることが多い。激痛であっても、今回のように短期間で痛みが消失してしまう例は珍しくない。
[YFMN20080520]
経産婦(1人) 30代 群馬県
腰痛 肩こり 片頭痛(偏頭痛)
悪阻(つわり)
2008年5月(妊娠9週目)
腰痛は4〜5年前から徐々に悪化。腰部と臀部から大腿後側にかけて痛む(激痛はなくだるく重い)。肩こりは中学生の頃から感じ始め、2年前から悪化。片頭痛も中学生の頃に発症し、妊娠期には悪化し2週間に1回のペースで発症する。悪阻は悪天候の時に悪化。
特になし
腰部、頚部ともに筋肉のこわばりが解消されれば緩解する症状だと判断した。頚部、肩、腰部はそれぞれ相関があるために、一つの症状として扱った方が効率的に改善させることができると考えた。腰部のこわばりを緩和させた後、頚から頚のこわばりを緩和させた。1回目の施術直後、体が軽くなるのを実感して頂いた。症状が急を要するものではないため、しばらく様子をみて頂くことになった。
曲池(左)、肩貞(左右)
腰、頚、腕にスポットを当て施術を行い、悪阻にはあえてアプローチしなかった。症状にはグループ化して対処した方がよいものと、そうでないものがある。悪阻を緩解させるためには他の対処も加えなければならないと判断しあえて無視した(過剰な施術を回避するため)。片頭痛の発症ペースが今回の施術で減ることを願いたい。
[YFTT20080521]
症例について
同じ病名や症状であっても効果には個人差があります。また、このページの症例は当院の経験であり、鍼灸の一般的な効果を意味するものではありません。