痺れ(しびれ)

すべての症例を掲載することが難しいため、一部を紹介します。

患者

男性 70代

来院

2017年1月

症状と来院理由

5年前、指先(左)にしびれが出現。病院で検査を行うと、頚椎の3・4・5番辺りが狭窄していると診断された。その後、手指(右)にもしびれが出現したため、2年前に頚椎の手術を行った。「医師には『成功した』と言われたが、しびれは変わらない」とのこと。最近になって、しびれが増悪し、整形外科で検査するも異常が認められず、「様子をみましょう」ということになった。四六時中、指全体にしびれがあり辛い。鍼灸で良くなることを望み、来院された。

手の指先のしびれの症例(鍼灸/群馬県伊勢崎市)

治療と経過

肩甲骨に顕著な緊張がみられた。その緊張に鍼をして緩めると、直後から左手のしびれが軽減。次いで、下部の頚椎の緊張を解くため、母指の付け根のツボに鍼をした。すると、しびれがさらに軽減された。ここで初回の施術を終えた。2診目以降も、同様に下部の頚椎の緊張を解くよう施術した。4診目で、「日常生活の際に、手指のしびれを忘れる時も出てきた」とのこと。5回目の施術後にしびれが気にならなくなった。

同時に治療した症状

なし

使用した主なツボ

肩貞LR 魚際L

考察

5年前から悩んでいた指先のしびれが改善した症例。病院の検査では頚椎の3・4・5番に狭窄が見られたということであるが、当院が着目したのは、頚椎7番であった。「脊柱管狭窄症」と診断されていても、このように頚椎の緊張を解くことで、しびれが消失することがある。このような症例から、必ずしも狭窄していることが原因とは言えない。[YMPM140117]

症例4

患者

男性 30代 群馬県/前橋市

来院

2014年5月

症状の特徴と経過

3年前、突然右腕に痛みと痺れ(しびれ)が出現。整形外科に行き、最初の2院では痛み止めを処方され、最後の3院目では「胸膈出口症候群」と診断され、筋肉を緩める薬と胃薬を処方され飲み続けたところ2ヶ月で症状が消失した。2ヶ月前、再び同様の症状が出現したが、直感的に薬では根本解決にはならないと考え病院には行かず。当院の噂を聞いて来院。頚から肩にかけてコリ感があり、肘を中心に痺れがある。痺れが強くなると痛みが加わる。書き物をしている時に最も悪化しやすい。

養気院_症例_肩こり_06

同時に治療をした症状

腰痛

治療の内容と経過

頚を確認すると頚椎の3番付近に強い硬結(筋肉のこわばり)があった。このポイントを起点に肩こりが生じ、肩こりが腕の痺れを引き起こしていると考えた。さらに、頚と仙骨との関係に着目し、仙骨から頚を整えることにした。仙骨のツボに鍼をすると、肩こりが消失。同時に腕のしびれがほとんど消えた。頚の動き整えておくために、胸椎にあるツボを使用。

使用した主なツボ

次髎R T7(1)

まとめ

仙骨のツボに行った鍼1本で、肩こりと腕に痺れのほとんどが消えたことから、仙骨が発端になって症状が出たと推測できる。このように、一見すると症状と関係なさそうなところに深い関係があることがあり、触診を怠るとたどり着くことができない。「胸郭出口症候群」という診断名は妥当かもしれないが、診断名には身体の癖が含まれていないため、診断名に捕らわれずに柔軟に発想することが大切であると再認識した症例であった。

[YMYS170514]

症例3

患者

女性 30代 群馬県/伊勢崎市

来院

2013年6月

症状の特徴と経過

症例3の解説図バレーボールの練習中に、味方プレーヤーの肘が左肩に強く当たり、その直後から激突部位が痛み、腕が痺れるようになった。その翌日に来院。観ると、肩の可動域も日常動作が難しいほど著しく低下。

既往歴(これまでにかかった病気)

特になし

治療の内容と経過

(肘が衝突した)三角筋という筋肉に熱感。大きな腫れはない。衝撃によって筋肉がダメージを受け、腫れによって神経を圧迫していると考えた。筋肉が回復すれば、痛みやしびれが解消されると思われる。そこで、筋肉の炎症をいち早く抑えるために、左手の甲にあるツボを利用した。刺鍼の直後から肩の可動域が改善(約30度広がる)。鍼をしたまま10分間休み、治療を終了。翌日には若干の痛みが残る程度。しびれは完全に消失。

著しい効果があったツボ

肩秤(左)

まとめ

怪我をした翌日に治療をしたことが、順調な回復に寄与したと考える。こうした症状の場合、ダメージを受けた患部に施術を行う場合は注意が必要で、慎重に行わないと症状を悪化させてしまうこともある。こうした際、遠隔から治療できる鍼灸はとても便利だと言える。

[YFHK210613]

症例2

患者

男性 60代 群馬県

来院

2008年11月

症状の特徴と経過

以前から肩こりと胸やけを感じていた。1ヶ月ほど前に歯槽膿漏が悪化したのと同時に左の肩こりが悪化した。ひどくなるとコリ感に痛みが加わる。また、肩こりの悪化と伴って左腕の外側全体に痺れが出現した。常に症状はあり、眠っている時のみ症状から離れることができる。整形外科2件に通院し、薬を処方されたが改善しないため当院に来院した。

既往歴(これまでにかかった病気)

肺気腫、火傷など。

治療の内容と経過

触診すると、左の肩(肩井付近)の方が不自然に硬くなっており、腕のしびれとの関連性が疑われた。さらに、この左肩は、背中(肩甲間部)のこわばりが引き起こしていると思われた。実際に、背部を緩めると肩こりは激減した。これに胸部への施術を加えた。初回の施術で症状は半減し、2回目の施術で肩こりは完全になくなり、しびれは肘付近に残るまでに改善。3回目の施術で痺れが完全に消滅したので治療を終了した。

著しい効果が見られたツボ

厥陰兪(左)、雲門(左)、合谷(左)、天井(左)

まとめ

痺れの原因そのものは、肩(肩井付近)のこわばりと単純なものであった。しかし、肩こりの原因そのものは、肩にあるわけでなく、背部のこわばりが原因だったと思われる。このヒントになったのが、発症前の歯槽膿漏の悪化である。口内のトラブルと背部は関連していることが多い。全体の関連性がわかりやすかったため、施術方針を迷いなく固めることができた。

[YMHS101108]

症例1

患者

女性 40代 群馬県

来院

2006年1月

症状の特徴と経過

2005年3月から始めたホームヘルパーの仕事が忙しくストレスを抱えるようになっていた。同年11月、背中の左側から左中指にかけてしびれが出現。11月末頃には背中に痛みが出現し眠れなくなる。一週間後、背中の痛みは消えたが左腕から指にかけてのしびれがとれず整形外科を受診。MRIの結果、後縦靱帯骨化症(OPLL)と診断される。「(治らないので)今のうちに家族と過ごしておくように」と言われ激しいショックを受けた。

既往歴(これまでにかかった病気)

28年前に腎炎。

治療の内容と経過

初診時、病名(難病)告知による強いストレスを受けていた。精神的苦痛を取り除くことが優先される状況であった。また、それがしびれの緩解に必要な条件でもあると考えた。初回の治療後、しびれが緩解し、夜中に足の冷えが気にならないなど…好転が見られた。2回目後、睡眠が深くなった。3回目後、しびれ消失。その後、軽いしびれが出現することはあったが、5回目後、しびれが消失。

著しい効果が見られたツボ

至陰、合谷(左)、厥陰兪(左)、天柱(左)

まとめ

配慮に欠けた病名告知によって精神的ショックを受けていた。このショックを和らげる唯一の方法は症状の緩和しかなかった。幸い、1回目から著しい効果が現れたため、気持ちがラクに変わった様子。その後、グングンと調子が上がり、「診断された病名な何だったのだろうか…」という状態に(診断を疑う必要あり)。心の傷を癒せたことが何よりも嬉しかった。

後縦靱帯骨化症
後縦靭帯骨化症とは、脊椎椎体の後縁を上下に連結し、脊柱を縦走する後縦靭帯が骨化し増大する結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて知覚障害や運動障害等の神経障害を引き起こす病気です。骨化する脊椎のレベルによってそれぞれ頚椎後縦靭帯骨化症、胸椎後縦靭帯骨化症、腰椎後縦靭帯骨化症と呼ばれます。
<引用:後縦靱帯骨化症(難病情報センター)

症例について
同じ病名や症状であっても効果には個人差があります。また、このページの症例は当院の経験であり、鍼灸の一般的な効果を意味するものではありません。