吐き気・嘔吐

すべての症例を掲載することが難しいため、一部を紹介します。

症例5 吐き気と嘔吐で学校に行けない 

患者

男性 10代前半

来院

2016年12月

症状と来院理由

夏休みが終わり、学校へ行こうとすると、吐き気や嘔吐、発熱が起こり体調が悪くなる。始めは我慢をして登校していたが、10月の初旬から学校へ行けていない。現在は、自宅に居ても吐き気があり、学校のことを考えるとひどくなり嘔吐してしまう。「病気が見つかったら怖い」という不安な気持ちから病院には行けずにいる。ご両親が心配になり、症状について調べると「自律神経失調症かもしれない」と考えた。そこで、鍼灸治療が良いのではないかと考え、来院された。

吐き気と嘔吐の症例(鍼灸/群馬県伊勢崎市)

治療と経過

腹部と背部の触診を行うと強い緊張が見られた。この緊張を緩めるため、膝のツボに鍼をしたところ、すぐに吐き気が治まり、楽な感覚になった。しかし、帰宅後、学校のことを考えると吐き気が出てしまったとのこと。2診目、同様の治療方針に、手のツボを追加した。すると、3回目の施術後から「自宅で吐き気が出ることがなくなり、体調もすっきりしている」との感想を得た。学校に行けるようになったので、その後は施術のペースを空けた。症状が出ていないので、5回目の施術で治療を終了した。

同時に治療した症状

なし

使用した主なツボ

曲泉R 合谷R

考察

吐き気や嘔吐を起こしやすい場合、腹部と背部の特定部位に強い緊張が見られる。精神面から引き起こされる事も多い。今回の症状は、精神面が深く関わっていることは間違いない。ただし、心からのアプローチばかりが有効とは限らない。心と体は一つであることから、精神状態がもたらした肉体の変化に注目することで、その原因となる具体的な事象が見えてくる。
このケースでは、腹部と背部の過緊張を解くことで、症状が解消され、結果的に精神の安定も取り戻すことができた。この症状は、いわゆる「自律神経失調症」と言えるかもしれないが、鍼灸では症状を個別に分析し、調和を図ることができる。[YMKH171216 ]

症例4 頭痛と吐き気

患者

女性 40代 群馬県/伊勢崎市

症状の特徴と経過

数ヶ月前から頭痛が増えてきた。2週間前にも大きな頭痛と吐き気があったが病院には行かず自宅で我慢していた。いったん治まったが、一昨日から再び強い頭痛と吐き気に襲われ、昨日に脳神経外科を受診。MRI検査で異常なし。昨日から偏頭痛の薬(マクサルト)を飲んでいるが治まらず、今朝になって軽くなった。受診時の午前10時頃の頭痛は軽め。ただし、吐き気が強く起きているのがツライ状態(ベッドに横になっている方がラク)。養気院_頭痛_症例_07

治療の内容と経過

起きている状態では吐き気がツライため、すぐにベッドに横になった頂いた。膝と足首のツボを用いて、右の肩甲骨の内上角を緩めた。吐き気がすぐに軽くなってきた。続けて左側も同様に緩めた。すると、起きていても吐き気を感じない状態に。その時点で、右のおでこに軽い痛みが残っていたので、肩甲骨の内上角にあるツボを使ったところすぐに消えた。辛そうな表情で来院したが、帰る頃には笑顔がみられた。1週間後の来院での尋ねてみると、直後から吐き気が消えて、頭痛は「モワ〜ン」とする軽い感覚が残っていたが徐々に消え、6日後にはスッキリしたとのこと。

同時に治療した症状

なし

使用した主なツボ

膝陽関RL 懸鐘RL おろしR

考察

いわゆる偏頭痛において吐き気が伴っている場合、肩甲骨内上角に独特な硬さが出現している。吐き気を伴っている状態では入念にチェックするようにしている。一般的に治りにくいとされている偏頭痛であるが、肩甲骨に特徴が出現するので見逃さなければ、それほど難しい症状ではない。

YFON160514

症例3

患者

女性 50代 埼玉県/上里町

来院

2009年3月

症状の特徴と経過

5年くらい前からストレスを感じると、頭痛、発熱が起こり肩こり(頚こり)を感じる。その後、心臓がドキドキすると同時気持ち悪くなり、嘔吐をする。このようなことが、数ヶ月に1度に頻度で起こっていた。軽い頭痛の際は、嘔吐には至らない。腕がだるい。

既往歴(これまでにかかった病気)

特になし

治療の内容と経過

頚、特に右側のコリを解消させるように施術を行った。腕の疲労が頚に影響していると考えた。また、肩甲間部(肩甲骨の間)のコリが動悸や吐き気に影響していると考え、同時に解消させた。1回の施術で、その後1年無症状が続き、2年後からは時々頭痛がすることがあっても嘔吐に至ることはなかった。3年が経過した頃から、頭痛に伴う嘔吐が2回あったため、初診から3年半後に2回目の来院。状態を確認すると初診と同様の症状であり、同様の所見だったため、初診に倣って施術を行った。

著しい効果が見られたツボ・活法

合谷(右)、心兪(右)、カスミ、顎関節調整

まとめ

まさに「ツボにはまった」と言える症状である。症状の原因と治療方針がピタリと一致したため5年間の症状が1回の施術で治ってしまった。再発の原因は精神的な負荷であった。その負荷が身体のどこに変調をもたらすのか観察することにって、予防が可能であると思われる。今回の症例は劇的に改善した一例。通常は日頃のケアが大事である。

[YFMS230309]

症例2

患者

女性 20代 群馬県

来院

2008年3月

症状の特徴と経過

スポーツクラブのインストラクター。レッスンの講習のため夜9時頃から約30分間プールに入った。いつもはジャグジーで温まってから終了するが、この日は次の予定が続いていたため、軽くシャワーを浴びるのみ。日付が変わって、翌朝の5時、気持ち悪さで目が覚めた。その直後から嘔吐を3回。夜間救急を受診し整腸剤を処方された。その後も嘔吐を3回、近くの医院で点滴を受けて症状が落ち着く。2日後、嘔吐や吐き気は解消されていたが、腹部の気持ち悪さがとれない状態で来院。触診すると、下腹部の冷えが著しかった。

他の症状

肩こり

既往歴(これまでにかかった病気)

緑内障、胃腸虚弱(体質的)

治療の内容と経過

東洋医学には、六経(りっけい)弁証というものがある。これは、風邪(感冒)を六段階に分ける方法で、その段階によって治療法を変える。この症状は六経弁証でいうところの、少陽病だと判断した。この少陽病について簡単に説明すると、風邪の初期症状によく見られる、寒気、くしゃみ、鼻水、頭痛などの症状を一気に通り越して、内臓の働きに影響が及んでしまったものである。もともとの体質的な胃腸の弱さに疲労が重なり、発熱のきっかけが作れなかったのかもしれない(発熱は風邪を追い出す反応なので、発熱しない方が症状が重くなる)。この場合、みぞおち辺りの緊張が強くなり胃に影響し嘔吐をすることがある。
治療は、体の表面に体温が巡るように働きかけると同時に、腸の働きが正常になるようにフォローした。

使用したツボ

外関(右)、気海兪(右)

まとめ

このような症状は東洋医学の得意とする分野である。風邪の症状を六段階に分けるという発想は西洋医学にはないため、このような症状に対しては胃腸にフォーカスするであろう。東洋医学からみれば、胃腸そのものに原因があるわけではなく、胃腸は二次的にダメージを受けているにすぎない。

[YFYN20080319]

症例1

患者

女性 20代 埼玉県

来院

2005年8月

症状の特徴と経過

2年前、仕事で疲労が蓄積していた頃、眠れなくなった。半年後、病院に行き「自律神経失調症」と診断された。疲労を軽減させるために労働時間を短くした(→4時間)。しかし、症状が緩和されず睡眠障害が目立ってきたため来院。吐き気、嘔吐(時々)、肩こり、頭痛を治したいとのこと。医師から処方された薬を服用中。

他の症状

不眠、肩こり、頭痛、耳鳴、月経痛(生理痛)

既往歴(これまでにかかった病気)

特になし

治療の内容と経過

初回、肩こりを緩和せさようと働きかけるものの、症状に変化なし。2、3回目も特に変化なし。4回目の施術で肩こりに焦点を当てず、全身の緊張を和らげるように方向転換。結果、吐き気が夜間のみに減った。5回目後、肩こりが緩和した。6回目後、夜間の吐き気が減少し、同時に頭痛の軽減、後頚部のこりの軽減が見られた(肩こりはむしろ増悪…触診では軽減)。7回目後、吐き気がほぼ消失し、頭痛が消失した(肩こりは残った)。睡眠障害は軽減されず、睡眠導入剤を手放すことができず。その後も環境の変化やストレスで体調を崩しやすかったためケアのために時々来院。就労時間を元に戻せるまでに回復した。

著しい効果が見られたツボ

太衝(右)、合谷(右)、三陰交(左)

まとめ

精神、体力ともに弱っている状態であったため、施術は必要最小限に止めるべきであった。しかし、1〜3回目は肩こりの緩和にこだわりすぎて、深追いをしすぎてしまった。4回目以降、肩こりに目をつむって全体に目を向けてから著しい効果が見られた。戦略ミスにより、得られるはずの効果を失った反省すべき症例である。

[YFIS20050826]

症例について
同じ病名や症状であっても効果には個人差があります。また、このページの症例は当院の経験であり、鍼灸の一般的な効果を意味するものではありません。