伝統の意味を考える ──
鍼灸の伝統を考える時、東洋医学がもっとも大切です。東洋医学にしか診(み)えないものがあります。その独自の視点を利用し、新たな可能性を追究しています。
東洋医学の歴史は、2,000年以上にわたる実践の集積です。そこで育まれた理論を現代の場で実践することに喜びを感じております。
東洋医学は体の部分を切り離して診ることはありません。東洋医学が注目するのは“流れ”です。滞りのない体を目指す医学です。それは自然をお手本とした考え方です。大気や水が空や大地を巡り、個々の生命体を営んでいます。人もまた同じです。体内に流れるエネルギーが滞りなく流れ、内臓や関節の働きを営んでいます。この流れに異常が生じた際に、それを正常にするのが東洋医学の考え方です。
東洋医学には副作用という概念がありません。お一人お一人の体力や症状に合わせて調整するのが東洋医学のやり方です。鍼灸は極めて体にやさしい療法です。適切なツボ選び、適切な刺激量を守る限り、施術後に不快な症状を感じることはありません。
※「副作用」「好転反応」「瞑眩(めんけん)」という言葉が誤診による悪化をごまかす目的で使われることがあります。そのため、これらの言葉が誤解されていることがあるように思います。
東洋医学には「未病(みびょう」という言葉があります。病気になる前の状態のことを言います。古い医学書には、病気になってから治すのではなく、病気にならないように予防する重要性が説かれています。たとえば、「なんとなく体がだるい」という症状も体が発した何かのサインです。こういう時、ツボに反応が表れています。その反応を読み解き適切な施術を行うことで病気を予防することができます。