まずは、頭痛の分類についてご説明しようと思います。頭痛にも様々な原因があって危険度も違います。特に気をつけなければならないのは命に関わる危険な頭痛です。
医学的には片頭痛が正しいようです。片頭痛は字の通り、頭の片側に頭痛が現れることもありますが、痛みが移動したり左右両側が痛む場合があったりと様々です。ですから、いつも片側だけが痛むものではないのです。偏った痛み方が特徴なので「偏頭痛」とも言われているようですね。この頭痛の場合、痛んでいるのは「血管」です。頭の中の血管が拡張し、その周囲が炎症を起こして痛みます。
(以下、片頭痛に統一して表記します。)
片頭痛の症状の特徴を下記にまとめてみます。チェックしてみてください。
片頭痛発作の直前に特徴的な症状が起こることがあります。特に「閃輝暗点(せんきあんてん)」と言われる視覚障害は不安感を大きくする前兆症状と言えます。その他、吐き気、嘔吐(おうと)、あくび、イライラ感、空腹感、むくみなどが現れることがあります。
ただ、上記のような前兆症状は頭痛と一緒に起こることもあれば、頭痛の後に起こることもありますので、必ずしも前ぶれ症状とは限りません。
前項で書いた通り、閃輝暗点は片頭痛の前兆症状です。でも、必ずしも頭痛の前に起こるとは限らないようです。中には頭痛の後に閃輝暗点が出現するケースもあります。それでは、閃輝暗点がどのような視覚障害なのかご説明しましょう。
突然、目の前がチラチラ光り、ノコギリの刃のようなギザギザしたモノが現れます。そのギザギザが大きくなったり、形を変えたり、動いたりします。その部分の映像は見えなくなります。場合によっては視野の片側がまったく見えなくなったり、中心部がぼやけて見えにくくなったりします。出現する状況によって、出現している時間はバラバラのようですが、10〜20分程度、その光やギザギザが視界をさえぎります。
初めてこの症状に出会った人は強い不安感に襲われることが多いようです。発作回数は週1回〜月に数回です。
病院で診察を受けても、この閃輝暗点の症状をすぐに理解してもらえないことが多く、中には精神異常と診断されてしまうケースも耳にしました。医師本人がこのような症状を自覚したことがない場合、すぐにわからないのかもしれません。知識のある医師であれば、すぐに理解してくれると思いますので、諦めずに症状を伝えることが重要です。それでも難しい時は、病院を変えて診察を受けてみるとよいと思います。
確かな原因はまだ不明な点が多いようですが、近年の研究でそのメカニズムが解明されつつあります。脳内のセロトニンの増減によって脳の毛細血管が拡張したり収縮します。何らかの原因によって、セロトニン量が減少すると、脳の視覚情報を処理する部分の血流が減少します。その結果、脳内の血管が痙攣すると閃輝暗点の症状が出現するという説があります。
片頭痛を起こしやすい体質があって、親から子へと遺伝すると考えられているようです。体質だけが原因で必ず発症するわけではありませんが、ストレス、ホルモンの乱れ、食品などによって片頭痛が引き起こされます。ストレスはストレスが加わっている間より、むしろストレスから開放された時に頭痛が現れやすいのが特徴です。
また、女性ホルモンも頭痛と深く関わっています。妊娠中の頭痛、避妊薬の服用などで頭痛が現れることがあります。
人によっては、チョコレート、ワイン、チーズ、カフェイン、MSG、人工甘味料などの食品によって片頭痛が引き起こされてしまうこともあります。
精神的なストレスや身体的なストレスによって起こる頭痛です。肩こりや頚のこりに悩まされている人に多い頭痛です。簡単に言ってしまうと、肩や頚のこりが頭蓋骨を覆う筋肉まで達してしまうことです。この頭痛は痛みというより、頭に重さを感じるのが特徴です。「痛くはないけど、頭がスッキリしない」というようなハッキリしない違和感を感じます。
この頭痛の方は肩こりや頚のこりに対するアプローチが必要です。普段から緊張しすぎて硬くなっている筋肉を和らげ血液の循環を正常にしなくてはなりません。血液の循環がよくなると、重さや鈍い痛みの原因となる老廃物が排出されるので、頭重感などから解放されます。
ある時期に集中して起こるのでこのような名前がつけられています。ある一定期間(多くの場合1〜2ヶ月間)、毎日のように頭痛が続きます。この群発期は、年に1〜2回のこともあり、また数年に1度のこともあります。目の奥をえぐられるような不安を伴う激しい痛みが特徴です。群発期間は毎日のように起こるので、いつ起こるのかという不安感に悩まされます。頭痛全体の中に占める割合は1%程度です。原因ははっきりしていませんが、血管の拡張が引き金となっているようです。
群発頭痛の特徴を下記にまとめてみました。参考にしてください。
痛みの程度や痛みの種類はどうでしょうか。重苦しいのか、締め付けられるのか、ドクンドクンと脈のリズムで痛いのか、激しく痛むのか、思い出してみましょう。
頭痛と言っても、痛む場所は頭痛のタイプによって異なります。前側、頭頂部(てっぺん)、後頭部、側部、それとも全体なのか思い出して見ましょう。
もし、悪化する原因に思い当たるものがあれば、必ず伝えましょう。どんな時に悪化するかを確認することは診断において極めて重要だからです。毎回同じ時間に悪化する場合も必ず伝えましょう。
悪化する状況や環境と同様、改善したり緩和する時はどんな時なのかも極めて重要です。
吐き気、嘔吐、目の症状、鼻水、肩こり、頚(くび)のこり、閃輝暗点(せんきあんてん)、めまい、ふらつきなどはありませんか?
専門的には随伴症状と言います。頭痛に伴う症状も診断上重要な情報になります。
専門的には後症状と言います。頭痛が治まったあとの症状も診断する上で貴重な情報となります。
遺伝的に受け継ぎやすい頭痛があります。ですから、ご家族のご様子も参考になります。
緊張型頭痛は肩こりや頚(くび)のこりの仲間で頭のこりと言えます。ですから、肩こりがあると緊張型頭痛かと思ってしまいます。でも、すぐに判断してはいけないのです。片頭痛の前兆にも肩こりがあります。ですから、肩こりの“ある”“なし”だけで、片頭痛と緊張型頭痛は区別できませんので注意が必要です。こう考えると、肩こりは肩こりにとどまらず、身体に様々な症状を引き起こすことがご理解いただけると思います。私の経験では、肩こりによって、めまい、眼精疲労、集中力低下、腕ののしびれなどを引き起こしているケースをよく診ています。
そもそも、肩こりの原因を突きとめようと頚椎(頚の骨)をレントゲンで撮ると、中高年の女性には何らかの異常があることが多いようです。重い頭を支える頚はデリケートな関節です。ですから、どうしても骨は少しずつ変形してしまいます。もちろん、そのほとんどは身体に影響のないわずかな変形ですから気にすることはありません。
さて、ちょっと考えていただきたいことがあります。頭痛があって肩こりがある患者さんが病院でレントゲンを撮ったとします。頚椎(頚の骨)に少し変形があることがわかりました。さて、この患者さんは頚の骨の異常が原因で肩こりとなり頭痛になったのでしょうか?
答え:
YESでもありNOでもあります。
レントゲンで頚椎の異常があることがわかったことが紛れもない事実です。でも、この異常はいつ起こったものでしょうか?強い衝撃が原因の場合もあるでしょう。しかし、そのほとんどは“徐々に”なんです。ですから、この頚椎の異常が肩こりが辛くなった時期と一致しているかは確認できないのです。しかも、肩こりも自覚症状に過ぎませんから、肩こりと正常の境界線はあいまいなのです。
結論:
レントゲンで微妙な骨の変形しか認められない場合、診察の参考にしかならない
ですから、患者さん本人から聞き出す頭痛の症状がとても大切なのです。そうすれば、レントゲンの結果と合わせて総合的に判断できます。総合的な判断をしてもらうためにも、自分の頭痛は細かくチェックしておきましょう。適切な治療、適切なアドバイスをもらって煩わしい頭痛を早く治してしまいましょう。
片頭痛の痛み方の特徴として、血液の拍動と供に「ドクンドクン」と脈を打つように痛みます。でも、市販薬などの常用をしていると、痛み方が変わってくることがあります。「ドーン」とした感じの痛み方になってくるようです。ですから、薬を飲んでいる場合、症状が素直に出現しないので、その症状だけで判断はできなのです。
また、片頭痛は片側だけが痛むことが多いと言われていますが、必ずしも片側だけとは限らず左右両方に痛みが出現するこもあります。
頭痛のタイプを判断する上で、痛み方はとても参考になりますが、痛み方だけで判断することも危険なので注意が必要です。結局、総合的な判断が重要ということですね。
見分け方は、片頭痛に特徴的な随伴症状(頭痛と一緒に出る症状)で判断します。わかりやすく言うと、片頭痛特有の随伴症状が手がかりとなります。たとえば、「動くとガンガン響いて痛みが強くなる」「吐き気・嘔吐(おうと)」「光、音、臭いに過敏になる」などの症状があれば、片頭痛と言えます。もし、拍動性(ドクンドクン)の痛みでなくても、肩こりがあっても片頭痛です。緊張性頭痛の場合は動いても痛みが強くなったりはしませんので、頭をふってみるのも一つの方法です。
下記に紹介する病気は命に関わる危険なものです。このような病気でも頭痛があります。心当たりのあるものがあれば直ちに病院(脳神経外科)に向かいましょう。場合によっては救急車も必要です!
脳の表面にある動脈に「血管のコブ」ができ、それが破裂して脳を包む「くも膜」という薄い膜と、脳との間に出血が起こる病気。短時間で死にいたる危険もある恐い病気です。たとえ痛みが楽になってきたとしても、すぐに救急車で脳神経外科へ。
脳梗塞には脳血栓症(のうけっせんしょう)と脳塞栓症(のうそくせんしょう)の2パターンがあります。
脳血栓症は夜寝ている時に起こることが多く、比較的ゆっくり発症します。老人に多くみられます。前兆として手足のしびれ、軽い手足の麻痺、舌のもつれ、軽い意識障害などがあります。
一方脳塞栓症は昼間の活動期に起こることが多く、突発的に発症します。若年者にも起こります。こちらは前兆はなく、突然、めまい、半身麻痺、言語障害などの症状が現れます。
脳に血液を送っている血管が硬化(動脈硬化)すると、血管内が狭くなって血液の流れが悪くなります。時には血液の流れが止まってしまいます。このような場所には血の塊(かたまり)ができて完全に血管をつまらせてしまうことがあります。また、別の場所でできた血の塊がはがれ、脳の血管まで来て詰まってしまうことがあります。そうなると、脳には十分な酸素やブドウ糖が運ばれず、脳の一部が死んでしまいます。これが脳梗塞(脳軟化)です。
頭蓋骨の中にできる腫瘍のこと。良性と悪性とに分けられますが、どちらも早期発見が治療のカギになるので、迷わずに脳神経外科ヘ行きましょう。
頭を打った後などに、脳を包む硬膜の内側から徐々に出血する病気。出血が少量でジワジワと血腫ができるので、症状が出るまでに1〜数か月かかります。手遅れになる前に手術をすれば治る病気です。疑いがあれば脳神経外科へ行きましょう。