五十肩の夜も眠れないほどの痛みはどうしたら治るのか

院長の栗原です。

今回は、あの激痛がテーマです。

経験したことがある方ならわかる、五十肩の痛み。四十肩とも呼ばれます。

ひどい場合は、ちょっとした動きでも激痛が走り、肩の中で何かが爆発したのではないかと思うほどです。一瞬、呼吸が止まり、痛みが落ち着いて動けるようになるまで1〜2分かかることもあります。

夜間痛も五十肩の特徴のひとつです。夜中に痛みで目が覚め、そのまましばらく眠れないこともあります。

寝る姿勢を決めるのもひと苦労です。腕の置き場を慎重に探さないと、痛みが出て落ち着きません。ようやく眠れる姿勢が見つかっても、今度は布団をかけ直すことさえできません。寝返りも打てないので、身体のあちこちが凝ってきます。

YouTubeやSNSには、五十肩によいとされるストレッチが数多く紹介されています。しかし、本当につらい時期はストレッチすらできません。

「それができないから困っているんだ」

そんな感想しか出てこないのです。

五十肩の激痛と夜間痛解説

世間で五十肩と呼ばれているものには、大きく分けて二つの状態があるように思います。

ひとつは、肩の可動域が低下し、無理に動かそうとすると痛みが出るもの。

もうひとつは、肩をわずかに動かしただけでも激痛が走り、可動域がどうとか考える余裕すらないものです。

もちろん、医学的に五十肩がこの二種類に分類されているわけではありません。しかし、臨床ではこの違いを意識することが大切だと感じています。

世の中には「1回の施術で五十肩が治った」というミラクルな話もあります。

ただし、肩が上がるようになったことと、病気そのものが治ったことは別です。特に激痛が続く時期の五十肩では、一度の施術で症状が軽減したとしても、その後の経過を慎重に見ていく必要があります。

医学的に五十肩とは何か

実は、五十肩も四十肩も、厳密な医学的診断名ではありません。

40〜50代に多くみられる肩の痛みや動かしにくさを指す通称です。医学的には「肩関節周囲炎」という診断名が使われることがあります。

ただし、肩関節周囲炎という言葉は幅広く、肩の周囲に起こるさまざまな病態を含んでいます。

 

肩の痛みと主な疾患ガイド

図に示したように、肩の痛みや運動制限を起こす疾患には「凍結肩」「石灰沈着性腱板炎」「腱板断裂」「変形性肩関節症」などがあります。

この中で、時間の経過とともに痛みが自然に軽減し、以前と変わらない生活に戻れる可能性がある代表的な疾患が「凍結肩」と「石灰沈着性腱板炎」です。

特に石灰沈着性腱板炎では、猛烈な痛みが突然現れたかと思うと、数日から数週間で劇的に軽くなることがあります。

一方、凍結肩は数か月から数年かけて徐々に回復していくことが多い疾患です。

どちらも自然に改善する可能性はありますが、必ず完全回復するわけではありません。

だからこそ、ただ待つのではなく、病態に応じた適切な治療を考えることが大切です。何より、痛みのストレスから1日も早く解放されたいものです。

ここでは、鍼灸の臨床でも遭遇することの多い「凍結肩」と「石灰沈着性腱板炎」を中心に話を進めます。

なお、突然の激痛で肩をほとんど動かせない場合は、感染症など緊急の治療が必要な病気も考えられます。まず医療機関で原因を確認することが重要です。

なぜあんなに痛いのか

五十肩の痛みを考えるうえで、肩関節の構造は重要です。

肩関節は、人体の中でも特に可動域の広い関節です。腕を前後左右に動かすだけでなく、大きく回すこともできます。

これほど自由に動かせるのは、骨同士のかみ合わせが比較的浅いからです。その分、関節包や靱帯、腱板などの組織が関節を支えています。

こうした構造のため、肩を完全に動かさずに日常生活を送ることは簡単ではありません。

炎症が強いときは、わずかな動きでも痛みが誘発されます。動かさない方が楽だとわかっていても、着替えや寝返りなどで肩はどうしても動いてしまいます。

だからといって、長期間にわたって完全に固定してしまうと、今度は関節が硬くなるなど、別の問題が生じます。

ただし、激痛の原因は肩の構造だけではありません。凍結肩では関節包の炎症や拘縮、石灰沈着性腱板炎では石灰の吸収過程に伴う強い炎症など、それぞれ異なる仕組みが関わっています。

同じように激しく痛んでいても、身体の中で起きていることは同じではないのです。

五十肩に潜む本当の原因

患部に着目すれば、そこには炎症や組織の変化が起きています。

では、そもそもなぜ、そのような状態になるのでしょうか。

治療を考えるうえで私が重要だと思うのは、特別なきっかけがなくても五十肩になるという事実です。

実際に来院される患者さんから話を聞くと、肩に強い負荷をかけた覚えがないという方が少なくありません。

最初は軽い痛みだったので、自然に治るだろうと1〜2か月様子を見ていたところ、次第に痛みが強くなり、肩が動かなくなってしまった。

こうした経過をよく耳にします。

このことから、私は五十肩を単純に「肩を傷めた状態」と捉えるだけでは不十分だと考えています。

肩の組織に何が起きているのかを確認することはもちろん大切です。しかし、それに加えて、肩がどのような身体の状態で使われてきたのかにも目を向けたいのです。

肩関節は単独で働いているわけではありません。

当院が念入りに診るのは、肩甲骨、肋骨、そして脊柱起立筋です。

これらは肩の動きを支えるうえで、互いに関係しています。

肩関節の鍼治療

鍼治療には、痛みを軽減したり、炎症に関わる反応を調節したりする可能性が報告されています。

そのため、患部の周辺に鍼をする方法もあります。

ただ、私は患部だけに注目することが、必ずしも最適とは考えていません。

肩関節の動きを支える身体全体の状態を見直すことも大切だと考えています。

臨床経験では、患部だけでなく、肩甲骨や脊柱、肋骨の動きにも目を向けた方が、痛みや可動域の改善につながると感じることがあります。

少しイメージしにくいかもしれませんが、肩を動かすときには脊柱(背骨)も動いています。

例えば、5〜10歳くらいの子どもの背中に触れながら腕を動かしてもらうと、背中全体が揺れるように動くのを感じることがあります。

大人になるにつれて、脊柱の可動性は低下する傾向があります。

肩を大きく動かすときには、肩関節だけでなく、肩甲骨や胸郭、脊柱の動きも関わっています。これらが協調することで、腕を滑らかに動かすことができるのです。

脊柱の動きを妨げる要因のひとつとして、脊柱起立筋のこわばりが考えられます。

この脊柱起立筋の近くには、肺兪、心兪、肝兪、脾兪、腎兪など、内臓の名前がついたツボが並んでいます。

東洋医学では、こうしたツボを内臓の働きと関連づけて考えてきました。私はこの伝統的な考え方も参考にしながら、背中の筋肉の緊張や動き、全身の状態を観察しています。

次に注目したいのが肋骨です。

肋骨は脊柱と関節をつくり、呼吸や体幹の動きに伴って動いています。そのため、脊柱の動きと肋骨の動きは密接に関わっています。

そして、肋骨の背中側に位置しているのが肩甲骨です。

肩甲骨は胸郭の上を滑るように動き、その外側にある関節窩が上腕骨頭と組み合わさって肩関節を構成しています。

つまり、肩関節の動きを考えるときには、脊柱、肋骨、肩甲骨という一連のつながりを無視できないのです。

背骨から肩関節までの連動図

ここまでの話をまとめると、私が五十肩の治療で重視しているのは、痛む肩だけでなく、肩の動きを支える周辺の組織にも目を向けることです。

脊柱、肋骨、肩甲骨の動きを丁寧に観察し、触診によって筋肉の緊張や動きの違いを確かめていきます。

そのうえで、どこに鍼をすれば動きが変わるのかを考えます。

肩が痛いから肩だけを治療するのではなく、肩が動くために必要な条件を整えていく。

これが、当院の五十肩に対する基本的な考え方です。

症例