鍼灸が効く人、効かない人

患者さんからの質問

「鍼灸は“効く人”と“効かない人”がいるんですよね?」

と何度か質問を受けたことがあります。

どこかで、「鍼灸が効く体もあれば、効かない体もある」という噂を耳にしたのだと思います。私の施術が悪ければこんな質問が増えるでしょう(苦笑)

先に結論を書きますと、鍼灸が効かない人はいません。誰にでも鍼灸は効果的です(ごく希に例外があるだけです)。なぜ「効かない人がいる」という話が出てきたのでしょうか。

1.症状が同じでも原因が違う場合

鍼灸師には得意分野があります。たとえば、ぎっくり腰の患者Aさんが「あそこの鍼灸院に行ったら腰痛が一発で治ったわよ」と宣伝したとします。それを効いたBさんがその鍼灸院に行き、「生理の時に腰が痛むんです。」と言って治療を受けたと仮定します。

同じ腰痛のようですが原因が違います。Aさんの腰痛はぎっくり腰ですから、腰周辺の筋肉(筋膜)から出ている痛みです。一方Bさんは月経(生理)の関連痛です。

Aさんの治療では、筋肉の炎症を緩和させれば痛みはすぐ解消します。こじらせていないぎっくり腰なら、治療直後からスタスタ歩けることも珍しくありません。

でも、Bさんの生理痛は同じようにはいきません。内臓の調子から調えていかなければ生理痛は治りません。時間と回数が必要です。もし、BさんがAさんのように「一発で治る」ことを期待して鍼灸院に行ったなら、Bさんは「鍼灸は思ったほど効かない」と思うでしょう。

Bさんは、後日友人のCさんにこう話すかもしれません。

「あそこの鍼灸院、腕がよいって言うから行ったみたけど、全然治らないの」と。

そして、Cさんはこう解釈するかもしれません。

「Bさんの体には鍼灸が合っていなかったのかも…」と。

もし、CさんがBさんの話を話題にしたら、「効く人と効かない人がいる」という噂ができあがります。

症状が同じでも、原因が違うものはたくさんあります。必要な治療や治療回数も当然異なります。また、鍼灸師にも得意分野がありますから、ぎっくり腰は得意でも、生理痛は苦手ということもあるわけです。

2.施術のピントがずれた場合

鍼灸師も人間ですから、時には効果の薄い治療をしてしまうこともあります(もちろん、そんなことが続けば廃業ですから鍼灸師も真剣です)。

たまたま、効果の薄い治療を受けてしまった患者さんは、

「私は鍼灸が効きにくい体なのかもしれない」

と思い込んでしまうかもしれません。

薬は誰にでも作用します。薬が効かない人はいません。ただ、薬の種類や量が間違っていると効果が得られません。鍼灸も同じです。誰にでも作用するものですが、ツボや刺激量が適切でなければ効果が出せません。

鍼灸は、1回目の施術で効果を判断されてしまうことが多いです。鍼灸師が1回目の反応に基づいて、2回目の施術を組み立てようと思っても機会がないことが多いのです。

一度、鍼灸で効果を感じなかった人は二度目を受けることが少ないため、「自分は鍼灸が効かないタイプ」と思いこんでしまうケースがあるでしょう。

蛇足になりますが、1回目の施術というのは、患者さんの信頼を得るために鍼灸師にとってもヤマ場です。刺激量(ドーゼ)のさじ加減が勝負です。効果を強く実感してもらおうと刺激を強くしすぎれば患者さんの体力を奪い、症状も緩解しません。逆に刺激が弱すぎたら体は反応しません。初回の施術でピントを合わせることが高度に要求されています。

3.症状が重い場合

症状が重ければ、鍼灸施術直後には症状が緩解しないことがあります。だからといって、一度にたくさんの刺激を与えれば患者さんの体力を奪います。直後効果の実感は二の次とし、あえて少ない刺激で施術することもあります。

重症や難病の場合は、患者さんに「すぐに効果を感じられないことがある」ことを理解していただいてから治療計画を立てます。でも、その説明が足りなかったり、信頼を得られていなければ患者さんは離れていきます。別の鍼灸院に望みをつなげるならよいのですが、「鍼灸は効果がない」と見切りをつけてしまう場合もあるでしょう。

当然ながら、医療者である鍼灸師は自分の技術を客観的に判断し、対応でない症状や病気を引き受けるべきではありません。ただ、現場では、その線引きが難しい場面は多々あるもので、悩んだ回数は数えきれません。

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