良い鍼灸院の選び方
現役鍼灸師である私が「こんな鍼灸院を選びたい」という視点でまとめてみました。このページを読まれている方には、当院の受診を検討されている方、これから鍼灸院を探そうと思っている方だと思います。
当院の受診を考えていらっしゃる方は、当院が気をつけていること、という意味で読んでください。私が考える良い鍼灸院に近づけるように努力をしています。他の鍼灸院を探されている方は、鍼灸院選びの指標の一つとしてご活用いただければ嬉しいです。
免許
「鍼灸院なら国家資格免許取得者が施術をするから安心」と考えるのはちょっと危険かもしれません。時々、無免許鍼灸の噂を聞くことがあります。確認しづらいものですが、できれば免許を確認しましょう。鍼灸院によっては、免許証が壁にかけてあることが多いです。(≫私の免許証)
衛生管理
最近ではディスポーザブル鍼(使い捨て鍼)が一般的になりましたので、鍼で感染することはあり得ません。しかし、昔ながらの鍼灸院では同じ鍼を、消毒もせず他の患者さんに使ったり…ということが現実にあります(実際に就職活動で訪問した鍼灸院で衝撃的なものを見ました)。同業者としてこんなことを書くのは辛いのですが、管理がアマイところは間違いなく存在します。
使い捨ての鍼が衛生面では一番ですが、鍼にこだわる鍼灸師は使い捨てを使わない場合があります。でも、きちんとオートクレーブ(高圧滅菌)で処理した鍼ならば感染の心配は全くありません。使い捨ての鍼を使っていないからと、避ける必要はありません。また、逆にディスポーザブル鍼だとしても使い回しをされていたら意味がありません。
鍼を扱う鍼灸師の一部始終を見ることはできませんから、施設が清潔であるかどうかで判断するしかありません。鍼灸師も感染事故で信用を失いたくありませんから、よほど意識の低い鍼灸師でなければ大丈夫です。
鍼灸専門
鍼灸と接骨(整骨)を併設しているところがたくさんあります。「鍼灸接骨院」や「鍼灸整骨院」と名前がついている事が多いです。これは、はり師、きゅう師に加えて、柔道整復師という資格を持っている場合です。この場合、鍼灸はサブです(背景には保険の事情があります)。
よい鍼灸を受けようと思ったら鍼灸専門を選ぶ方が賢いです。ファミレスのラーメンよりもラーメン屋のラーメンがおいしい理屈と同じです。
開業年数
開業年数が多いのはプラス要素です。ただ、若手でもスゴ腕もいますし、ベテランであってもそこそこの鍼灸師もいます。クルマの運転を例にするとわかりやすいです。若くても上手、ベテランでも下手、ということは珍しくありませんよね。鍼灸院をかまえて患者さんの支持を得ているならば、開業年数や年齢は気にしない方がよいと思います。
鍼灸師の性別
女性の患者さんは女性鍼灸師を好む傾向があるようです。ただ、女性鍼灸師だから全てにおいて安心かといえば、そうではありません。性別で選ぶよりも、気遣いができる鍼灸師かどうかで選ぶことをおすすめします。
料金
鍼灸師が独自に料金を設定しています。鍼灸にかかるコストには、人件費(施術時間)、免許取得費、消耗品(鍼、もぐさetc.)、施設管理費(家賃etc.)、通信費、学術研究費などがあります。
コストに大きな違いが出るのは2つ。施設管理費と学術研究費です。たとえば、銀座で開業するのと私のように群馬の田舎で開業するのとでは全く違うわけです。また、勉強熱心で専門書をたくさん買ったり勉強会に頻繁に足を運んでいればお金がかかります。書籍だけで数百万円の投資を行った鍼灸師を知っていますし、専門書をほとんど読まない鍼灸師も知っています。
間違いなく言えるのは、都会ほど高く、田舎ほど安いということです。家賃だけは鍼灸師の技量とは全く関係ないからです。
あれこれ書いてしまいましたが、結論をいいますと料金と効果には相関関係がありません。一度足を運んで、高いか安いかを判断するしかありません。
コミュニケーション
悩みに真剣に耳を傾けてくれるかどうか、そして説明がわかりやすいかどうかです。医学用語、特に東洋医学の用語にはなじみのないものが多く、説明が困難なものがあります。わかりやすい言葉に言い換えて説明してくれるかどうかです。一度足を運んでみないとわからないと思いますが、電話での対応がわかりやすいかどうかでコミュニケーション能力を判断してもよいと思います。電話での印象が悪ければ、行っても同様の印象を受けると思います。
距離
最高の施術を受けられたとしても、遠すぎると通院で疲れて効果が半減してしまうことがあります。全国から患者さんを集める有名な鍼灸師もいますが、それは例外です。普通は通いやすい距離で鍼灸院を探して下さい。
得意分野
鍼灸師によってタイプはさまざまです。何でも診るオールラウンダーもいれば、特定の症状に強いスペシャリストもいます。たとえば、行列ができる鍼灸院でも、通っている患者さん達の悩みは腰痛ばかりということもあります。単純に患者さんが多いか少ないかだけでは選ぶことができません。
得意分野が予想できない場合は、電話で自分の症状を簡単に告げて、「私のような悩みで通院されている方はいますか?」と尋ねてみるとよいです。
「はい」と答えが返ってきたら具体的に尋ねてみましょう。具体的な事例を聞ければ安心できると思います。答えに迷う場合でも(個人差を考慮して)慎重に答えている可能性もあるので、自信のなさとすぐに判断するのはよくありません。あらゆるパターンを知っていると安易な答え方ができなくなるものです。いずれにしても、具体性のない回答ならおすすめできません。
相性
直接手を触れられて受けるものなので、鍼灸師との相性は極めて大切だと思います。話しやすい鍼灸師、触れられたときに違和感を感じない鍼灸師を選ぶとよいと思います。これだけはクチコミなどの評判ではわからないものですから、一度足を運び、自分の感性で確かめてみるしかありません。「また行きたいな」と思う鍼灸院がよい鍼灸院です。
担当者
鍼灸師一人で経営している鍼灸院ならば、担当する鍼灸師は決まっていますが、スタッフがたくさんいる鍼灸院では担当する鍼灸師がわからない時があります。院長はスゴ腕でもスタッフは1年生の場合もよくあります。院長に施術をしてもらう場合は別に指名料がかかるというシステムも時々みかけます。
スタッフが何人もいる鍼灸院では、担当者が誰になるのかあらかじめわかるところがよいと思います。また、何度も通う場合は、毎回同じ鍼灸師に診てもらう方が安心できると思います。
ホームページで選ぶ時のポイント
最近は、鍼灸院をウェブサイトで選ぶ方がとても増えていると思います。住所が出身地でない場合など、地域の噂を聞く機会がない時はネットでの検索が一番よいかもしれません。
ウェブサイトだけですべてを判断することはできませんが、選ぶポイントが間違いなくあります。これから書くポイントは、私自身がウェブサイトを運営する上で気をつけていることでもあります。
6年間ウェブサイトを運営してきて気がついたことが2つあります。1つ目は、自分の性格は隠せないこと。2つ目は、無いものはウェブサイトに書けないということです。
1.デザイン
ポイントは、芸術的でキレイなサイトであるかどうかではありません。読みやすいレイアウトかどうか、情報が親切に整理されているかどうかです。ウェブサイトがわかりやすく親切なものであれば、実際の対応もそれに近いはずです。
2.情報量
要点だけをポンと書くのも大切ですが、ある程度の情報量がないと伝えられないものもあります。ウェブサイトを訪問して物足りなさを感じたらおすすめできません。
3.施設の様子
施設の様子がわかりにくい場合もおすすめできません。自らの経験で、見せたくないものはわざわざウェブサイトに出しません。施設を見せたくなければ出さないでしょう。
4.言葉
わかりやすい言葉で説明されているかどうかがポイントです。ときどき、鍼灸師が読んでも難解な言葉で治療方針が説明されているサイトを見かけます。サイトの説明がわからない場合は、行ってもわからない可能性が…。
5.地図
わかりやすい地図を出しているところは、行ってからも親切な案内をしてくれるはずです。実際に親切な鍼灸師が不親切な地図は作らないと思うからです。
行ってはいけない鍼灸院
同業者からの批判を恐れずに書きますと、鍼の本数、お灸の数、施術箇所(ツボの数)で料金を設定しているところには行かない方がよいです。
その理由には根拠があります。一つ目の理由は、よい鍼灸は鍼の本数やツボの数で決まるものではないからです。料理の善し悪しが調味料の数で決まるものではないのと全く同じです。たとえば、魚の塩焼きのようなシンプルなものでも、素材選びと焼き方で味は全く変わります。適切な調味料とその割合は料理人だけが知っていますし、焼き加減は素人には真似できません。同様に、適切なツボと数は鍼灸師だけが知っていて、刺激量にも微妙なさじ加減があります。
2つ目の理由は、数で料金を決める場合、その鍼灸師が「手間」を売っていると考えているからです。患者さんの目的は鍼を刺されたりお灸をすえられることではなく、治ることです。治すために鍼灸師が見せなければならないのは、「変化」です。鍼が1本でも大きな体調が好転すればよく、鍼を100本使っても、体調が悪化すれば赤点です。