至陰の作用

冷えの問題

逆子の原因の一つに「冷え」が挙げられます。冷えの中でも問題なのは、足から腰のかけて冷えている場合です。逆子の治療でよく使われる至陰(しいん)というツボは、この足から腰の冷えを取ってくれる作用があります。その中でも、ふくらはぎ、太ももの後ろ、腰というように背面への作用が最も大きいです。

至陰の一次作用

至陰の作用は2つあります。その一つは、下半身の冷えを取ることです。特に背面の冷えがよくとれます。背面側が温まってくると、その温もりは前面にも伝わっていきます。そしてもう一つの作用は、逆上せ(のぼせ)を緩和させる働きです。指先の方にあるツボは頭部への作用が強いという傾向があります。

冷えと逆上せを同時に緩和するのが至陰です。ですが、2つのことが別々に起こっているわけではなく、頭部へ偏りすぎていた熱が巡って足まで降りてくるのです。つまり、至陰は血液循環を促進させ、体内の血液の流れを均一にしていることになります。他のツボでも同様に血液循環を改善する働きがありますが、至陰の場合、特に背面側の上下のバランスを整える作用が強いと言えます。

例え話になりますが、シーソーを軽い力で傾けようと思ったらどこを動かしますか?そう、両端ですよね。片方を上げれば片方が下がります。足の末端にある至陰は、そのような理屈で考えるとツボの性質を理解しやすいです。

至陰の二次作用

至陰は末端であると同時に循環のUターン地点です。こういうポイントは流れの速度が下がるため滞りが生じやすいのです。至陰穴にお灸をすると、流れの速度が上がり全身の循環まで改善します。至陰にお灸している時に、胎内の赤ちゃんが動くことが多いのは、子宮の中の血液循環にも変化が生じていると推測できます。

さらに変化が起こります。上下のバランスが改善されると下半身にたくさんの血液が流れるようになります(頭に偏っていた血液が下半身に移動する)。その結果、下半身が潤います(血液成分の90%は水なので)。この潤いが羊水にも腸にもよい影響を与えます。その結果、羊水が増えることや、便秘が改善されることがあります。

至陰の三次作用

このように、至陰というツボは赤ちゃんだけに作用するわけではなく、体全体に変化を起こし、その結果として赤ちゃんは動きます。「至陰は赤ちゃんと直結しているわけではありません」ということをあえて強調したいので、三次作用として表現しました。ネットでも「逆子のツボは至陰」という情報が多いので、至陰というツボにこだわってしまう妊婦さんも増えていると思います。私はあえて、「ちょっと待って!」と言おうと思います。逆子を直すために必要なのは、至陰ではありません。上下の熱のバランスが整っていること、下半身の血液循環が正常であることがポイントです。

鍼よりお灸が使われる理由

家庭でもできるから 昔からお灸は養生法の一つとして家庭で行われてきました。艾(もぐさ)と線香さえあればできるので気軽です。

指先の鍼は痛いから 通常、鍼治療の鍼はほとんど痛くありません(≫詳細)。しかし、指先など敏感な場所に刺した時だけは違います。足の小指にある至陰も鍼をすると痛いところです。鍼を刺す鍼灸師もいますが、痛いので避ける鍼灸師の方が多いようです。

お灸よりも大事なこと

「家ではどこにお灸をしたらよいですか?」という質問をよく受けます。でも、私はあまりお灸を勧めません。理由は2つあります。一つ目は、上記のようにツボに執着してほしくないからです。大事なことはお灸をすることではなく、体のコンディションを整えることです。お灸よりも先に生活習慣で改善できるところを探して指導しています。お灸は生活改善では足りない部分を補うものとして理解していただくようにしています。もちろん、逆子を直しやすい時期(28〜35週くらい)がありますので、鍼灸院のお灸で短期間に体調を改善させることは重要です。

2つ目の理由は火傷をしてほしくないからです。時々、ご自分でお灸をされて火傷をしてしまう妊婦さんがお見えになります。鍼灸院で正しくお灸をする場合は火傷の痕が残るようなことはありません。

 

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