吉岡貴人、鍼灸師が苦手な●●を鍛える―岡本の新人研修メニュー

副院長の岡本です。

新入社員のポテンシャルがすごい件

養気院は4月に新入社員を迎えました。

高校を卒業してすぐに鍼灸学校に入り、今年国家試験に合格した吉岡貴人くんです。

簡単な自己紹介を院内の掲示板に貼っているのですが、それを見た患者さんが「2001年生まれ……」と絶句しています。

うちは大手企業ではありませんので、毎年新人の定期採用があるわけではありません。うっすらと募集はしていますが、本当に会社のカラーに合った人、この会社で伸びていくと見込める人しか採らない、というのが栗原院長の方針です。

わたしは採用にはノータッチなので、彼がなぜここに入ろうと決めたのか、どのような経緯で院長が採用を決めたのか、すべてを知っているわけではありません。それはまた別の機会にこのブログで語ってもらうことにしましょう。

今日書いておきたいのは、そんな吉岡くんを先輩・上司として迎えたわたしの心境です。

今は、受付や電話対応、その他日常業務の合間を縫って、臨床に出るための研修をしています。実際に彼の仕事ぶりを見て、自分の身体に鍼を打ってもらって、その手の使い方を味わって感じたことですが、吉岡くんの鍼灸師としての素質は私を遥かに上回っています。

同級生だったら、自分は吉岡くんの背中を後ろから眺めることになっていたでしょう。そもそも、自分が18歳のときには、鍼灸師になることなんて少しも考えていませんでしたし。

何よりも、彼が医療者(というか、人と接する仕事全般)に向いているなと感じるのは、明るいこと、物怖じせず人に接することができるという点です。これは、なかなか教えられてできることではありません。屈託なく笑う様子を見ていると、いい家庭で育ってきたのだろうな、いい人に恵まれて大切にされてきたんだろうな、と思います。

たまたま自分が早く生まれてきて、免許を取るのも10年ほど早かったというだけで、先輩とか上司という立場で接しているのであって、「そもそも自分は彼に何か偉そうに教えられることなんてあるんかな?」ということは、常に頭の中をよぎります。「教える」というよりは、うまく踏み台として使ってもらえるにはどうすればいいだろうということを考えています。

 

「文章を書けなくはない人」になってほしい

鍼の技術や人柄の面での心配は一切していません。その上で、吉岡くんには文章を書けるようになってほしいと思い、入社してからは毎日書く練習をしてもらっています。

文章はAIが代わりに書いてくれる時代に入ってきましたが、プロの文筆家やブロガーでなくても、書くという能力は持っておいた方が得をします。

「鍼灸師なんて鍼が上手ければいいんだから、別に文章を書けるようになる必要はないでしょ」という意見もあるでしょう。あるいは、SNSとかでチョロっと気の利いたことが言える方が、今の時代は役に立つかもしれません。

それでも、というか、だからこそ、というか、まとまった量の文章を整理して書けることには価値があります。

私の印象ですが、鍼灸師の多くは、書くことが苦手です。その中にあって、書くことが苦手でなければ、その分チャンスが生まれます。

養気院は栗原院長がウェブサイトとブログで発信を続けた結果、20年にわたって経営を続けてこられた鍼灸院です。また、栗原が定期的に主催する鍼灸師向け技術セミナーに来られた方も、「栗原さんのブログを読んだことがきっかけで来た」とおっしゃる方が無数にいました。

栗原自身が、書くことによって未来を切り開いてきたこと、これが養気院の根幹にあります。それならば、ともに働くわれわれも「書くのが得意」ではなくてもよいので、少なくとも「書けなくはない」レベルにはなっておくべきだと思うのです。

自分の考えることを整理して書く、ということは、ごちゃまぜになって頭の中に漂っているぼんやりとした思考の断片を、文字という目に見える形に変え、文という他人が順を追って理解できる構造に並べ替えていく作業です。

それができれば、このブログのような間接的な手段に限らず、患者さんと話すときにも、患者さんが理解し、納得できることが言えるようになります。「書く」ことは臨床にも直結しているというのがわたしの考えです。

今ここでフィードバックを受けて訓練していれば、きっと一生役に立つことなので、がんばって書いてもらっています。

放っておいても立派な鍼灸師になるはずなので、彼が才能を開花させるための手伝いができればいいなと思っています。

ブログの原稿を何度もダメ出しされて書き直す吉岡氏

吉岡よ、父に学べ

ちなみに、吉岡くんに「お手本にするといいよ」とおすすめしたのがこちらのサイト。

よしおかカイロプラクティック研究所

そう、カイロプロクターである吉岡くんのお父さんが経営している治療院のサイトです。

この「親心」というエッセイに出てくる「次男(六歳)」が吉岡くんです。

http://www17.plala.or.jp/yoshioka-chiro/oyagokoro.html

簡潔な情景描写と、温かな気持ちにさせられる読後感が素晴らしく、今どきのブログのような画像や動画がなくても文章だけで伝わってくる筆力がすごいので、吉岡くんに「お父さん、読書家なんじゃない?」と尋ねたら、「めっちゃ読んでます」とのことでした。やっぱり!