誰も気が付いていない外観リニューアル

今回は、気が付かれている方が少ない外観のアップデートについてレポートします。

養気院のコンクリート造りです。正面から見ると入口の上には、この傘のような雨除けがあります。全面カチカチのコンクリートですから、角張った外観にならないように丸みをのある傘をつけてバランスを取ったのです。

こういう造形を造ってあとから取り付けたと思うかもしれませんが、この位置で型取りしてコンクリートを流し込んでいます。建物本体とは鉄筋で接続されているので、落ちてくることはありません(誰も心配していないと思いますが)。

養気院の傘を下から

職人さんによると、かなり手間のかかる仕事だったそうです。建造時の写真は探せばあるはずですが、昔過ぎて簡単に取り出せません。この建物が完成したのが2003年ですから、今から21年前です。

これだけ月日が経っていると、経年劣化の問題と向き合わなければなりません。近くで見ると、小さなヒビがあります。これを放っておくと亀裂になってコンクリート片が落ちてきます。

すぐ危ないというわけではありませんが、このまま10年、20年と放っておくわけにはいかないので、春頃に職人の清水さんに相談していたのです。

コストをかけない方法として、防水効果のある透明な塗料があるというのですが、見た目がテカテカしてしまうとのこと。妻は「お金なんてかけなくていいんじゃない?」という感じで妥協でよい感じに見えました。

倹約家の妻は何事にも慎重です。そんな妻に助けられて今があるわけですが、私はどうしても「テカテカ」というワードに引っかかりました。

見た目がプラスになるならよいのですが、マイナスに転じてしまうのは絶対に避けたいと思ったのです。当初の目的はメンテナンスだったのですが、しばらくしていると、私の頭の中はコストがどうとかではなくなって、妻のアドバイスもどこかに行ってしまいました。

アレがあるじゃないか?

思い出したのは中庭に使ったレンガ風タイルです。

中庭にミニタイルを貼る(養気院)

 

質感が完璧すぎて惚れ込んでいるアイテムです。年月が経ってもこの質感が落ちることはないだろうと確信が持てるのです。一緒に歴史を刻んでくれるパートナーして信頼できます。

これを入口の上の傘に貼り付けていくのはどうか、と思い切って清水さんに相談しました。素人目にも、このタイルを曲面に貼っていくのは面倒極まりないことがわかります。もちろん清水さんも難しさを重々承知しているわけですが、表情から決意が伝わってきました。

やる気だ!

何枚必要なのだろう、と計算すると約1000枚。

買うぞ!

レンガタイルの色はブロックの色に一番近いアッシュグレーにしました。中庭と同じ薄い茶色という案で考えていました。

完成したときに目立って、新しく生まれ変わりましたとアピールするにはよいのですが、わざとらしくなる気がしたので、気づかれなくてもいいと割り切って同系色にしました。

誰でも気がつくくらいの変化を出してしまうと、連続性を失って違和感が生じます。10くらい変わったらわかるくらいがちょうどいいかなと勝手に思っています。これが正解かどうかはわかりません。まぁ自己満足ですから。

ちなみに、これがビフォーの写真です。

養気院の傘の仕上げ方を考える清水さん

 

問題はどのようにタイルを配置していくのか。清水さんと話し合いをして清水さんの案に乗りました。結局、実際に作業する清水さんが納得している方法でないと成し遂げられないので、任せるしかありません。

最初に区画分けです。これをきっちりやるところが清水さんらしいです。あとでわかるのですが、これが大正解でした。

養気院のエントランスの傘

 

区画に合わせて一枚一枚丁寧に貼っていきます。専用の接着剤を使っていました。落ちないように気をつけてください。

養気院の傘にレンガタイルを貼る

 

だいぶ貼り付きました。写真で見るとあっさり1時間くらいでやったように思われるでしょうが、朝から開始して夕方までかかっています。素地のコンクリートが黒く見えるのは防水加工をしていたからです。この防水加工とタイルでコンクリートの寿命を延ばします。

どうですか、みんな気がついていなんのですが、こんなに見た目が違うんですよ。

養気院の傘にレンガタイルを貼る

 

区画からはみ出たレンガタイルをカットするとこんな感じになります。タイルが曲面に馴染んでいます。さすがです。こういう面倒な仕事を引き受けてくれるのは清水さんしか知りません。本当にありがたいです。

養気院の傘にタイルを貼る

 

せっかくなので上からの様子もお見せします。実は、残っている頭頂部がやっかいなのです。タイルを細かくカットしなければならない過酷な作業が待っています。

なんだか数学の問題のよう。ここに挑めるのが理系。あなたならどうしますか?

養気院の傘を上から見たところ

 

ついに清水さんは貼り遂げました。ここまで3日かかりました。このとき6月でしたが、かなりの気温になっていて、きつい作業だったはずです。本当にありがとうございました。清水さんのおかげで養気院があります。

養気院の傘にタイルを貼り終えた

 

こんなふうになりました! どうですか?
最初からこうだったみたいに馴染んでいませんかねぇ。

養気院の生まれ変わった傘

 

でも、これで終わりではないのです。下の方が残っています。ガラスのシールドがあるのですが、開業当初はありませんでした。この入口は西向きなので冬になると空っ風が吹き付けてドアの開閉に難が出たため、2年目のときに、絞り出したお金を使って追加したのです。

コストダウンでいろいろ我慢したのですが、空っ風をなめていました。小さい頃から恐ろしさを知っていたはずなのに。そういう話をしたらキリがなくて、当初は駐車場もこんなふうにコンクリートではなく、土の上に砂利を敷き詰めただけでした。

本題に戻ります。実は中庭と同じ茶色のレンガタイルを用意していたのですが、傘に使ったアッシュグレーが気に入ったため変更。赤茶はアクセントに使うことにしました。

そして、ご覧の通り(2日かかっています)。使用したレンガタイルは約400枚。

養気院のエントランスのレンガ調タイル

 

コンクリートって感じがなくなって、まるでレンガを積んで造ったような雰囲気(でしょ?)。
この仕上がりに大満足で、しばらくこの光景を愛でていました。

養気院のエントランスのレンガ・タイル

 

舞台裏ではこういう地味な(清水さんの)作業の連続でした。頭が下がります。

レンガタイルを加工

 

完成です。あまり変わっていない?
冒頭に貼り付けた写真とぜひ比較してみてください。

養気院の外観がリニューアル

 

夕暮れの姿も気に入っています。安心してください。自己満足だと自覚してます。

養気院の新しい外観

 

またね。