頭痛は本当に「頭が悪い」のか

こんにちは。副院長の岡本です。

いつもブログを読んでくださりありがとうございます。

毎日のように頭痛の患者さんを診ている

頭痛で苦しんでいる方を診る機会が多くあります。「痛くならない日はない」とおっしゃるような、重度の痛みをお持ちの方も珍しくありません。

一口に「頭痛」と言っても、その訴えはさまざまです。

「頭の横が痛い」

「後頭部が痛い」

「締め付けられるように痛い」

「頭の前側が痛い」

などなど。十人十色ならぬ、十人十“痛”です。

患者さんの中には、「あまりにも痛いので、病院で脳のMRIを撮ってもらった」とおっしゃる方も少なくありません。

そして、検査の結果は「異常なし」です。(「脳の異常あり」だったらそのまま病院で治療となりますので、鍼灸院に来ることはないでしょう)

脳に異常がないことはわかったけれど、でも、痛みがなくなるわけではない。仕方ないので鍼灸院を検索して来院した。

というパターンです。

脳に問題はないのに原因がわからない

頭が痛ければ、当然、頭の問題を疑います。

脳に異常がないのであれば、頭の外側、筋肉の問題なのかもしれません。

ご存知のとおり、頭にはたくさんの筋肉が貼り付いていて、表情を作ったりするのに役立っています。

頭痛のときに頭に直接鍼をする、という鍼灸院もたくさんあります。頭が鍼だらけになっている人の画像を見たこともあるのではないでしょうか。

しかし、それでも良くならない頭痛というものもあります。頭以外にも言えることですが、そもそも「ここが痛い」「じゃあそこに鍼しますね」で良くなればいいですが、それでも良くならないパターンは普通にあります。痛いところに鍼をするしかない鍼灸院だと、それで「詰み」です。

では、わたしたちは何を診ているか。

わたしたちは、頭そのものを診ることはあまりありません。頭を支えている首や肩、背中の筋肉の状態を診ていることの方がはるかに多いのです。

頭の筋肉よりも、首・肩・背中の筋肉の方が「強い」

なぜかというと、頭の骨に貼り付いている薄い筋肉よりも、頭を支えている筋肉の方が太く、力が強く、広い範囲に関係しているからです。

頭の筋肉で重りを持ち上げることはできませんが、首や肩、背中の筋肉を使えば、相当に重いものを持ち上げることができます。

小学生でもわかる理屈ですが、筋肉が大きければその分力は強いのです。ボウリング球くらいの重さがある頭を支えている首や肩、背中の筋肉の方が、圧倒的に大きな出力を持っています。そして、その筋肉が必要のないときに固まってしまえば、筋肉の強さに比例して、頭に強烈な力をかけてしまいます。

わたしたちは、それをこそ頭痛の主要な要因であると考えています。

「痛み止めを飲んでもすぐに再発する」という理由もこれでおわかりかと思います。

現在のところ、頭の痛みを生み出している筋肉だけを選び出して、そこの緊張だけを解除するような都合のいい薬は存在しません。一時的に痛みの感覚を遮断することはできても、頭をひっぱり続けている力そのものを消すことはできないからです。

「頭が痛い」という患者さんの訴えだけを鵜呑みにして「頭しか診ない」のでは、大事なものを見落としてしまう可能性が大きいのです。

「頭だけガチガチ」の人はいない

そんなわけで、わたしたちが頭痛を診る際には、患者さんが痛いとおっしゃるところはしっかり確認しつつ、その痛みを生み出している“余計な力”がどこから発生しているのか、ということを考えています。

実際に、ひどい頭痛をお持ちの方が「頭だけガチガチで、首や肩、背中はフワッフワ」などということはまずありえません。ほぼ間違いなく「あらゆる部位がガッチガチ」です。これを読んでいるあなたも、そうではありませんか?

その「ガッチガチ」の中でも、とりわけ問題の大きい場所を探し出し、ピンポイントの刺激によって緊張を解除できるのが鍼治療の特徴です。

ここまで読んで、鍼灸院というのは整形外科とも、神経内科とも違う考え方で頭痛を診ているということがおわかりになったかと思います。そして、その考え方の違い、というのは、比較的シンプルなものであることもおわかりになったのではないでしょうか。

この記事が、まだ鍼という選択肢が浮かんでいなかった方、可能性は感じつつも、不安を感じていた方が鍼の可能性を信じる一助になれば、嬉しく思います。