逆子(骨盤位)

すべての症例を掲載することが難しいため、一部を紹介します。

妊娠中のポイント

鍼灸は体に負担が少なく妊娠中でも安心して行える療法です。薬のように副作用がないので、妊娠期の体調不良やケアには最適です。体調と生活環境をしっかり確認した上で、適切なツボと適度な刺激量で施術を行っております。

症例13 

患者(妊婦)

経産婦 30代 群馬県/太田市

来院

2013年6月(妊娠29週)

経過と特徴

産科のクリニックからの紹介で来院。2回目の妊娠。1月ほど前から逆子であった。逆子体操はしていない。腰痛はあるが「ひどくはない」という。ふくらはぎにだるさと冷たさを自覚。疲れやすいと感じている。

治療の内容と経過

足のくるぶしの少し上にある三陰交の右側のみに鍼をした。すると、ふくらはぎが温まり、体全体もポカポカしてきた。この日は三陰交のみで終了。翌日の検診で頭位を確認できた。頭位を安定させるために2回目の施術を行った。この時もふくらはぎのだるさがあったので、腰にあるツボを使ったところ改善。

著しい効果が見られたツボ

三陰交(右)

まとめ

1本の鍼のみで翌日には頭位に変化しているという、いわば理想の展開であった。29週と逆子の治療として好条件であったことも大きいが、1つのツボにポイントを絞れたことも、よい結果に結びついたと思われる。

[YFES120613]

症例12

患者(妊婦)

初産婦 20代 群馬県

来院

200X年3月

妊娠週数

35週+3日

経過と特徴

31週では頭位、33週で逆子とわかる。34週の時点で当院に予約の電話があったが、すぐに空きがなかったため来院は35週目となった。健康状態はおおむね良好であるが、ゲップ、動悸、腰痛などが妊娠前より気になっていた。

治療の内容と経過

頭頂部や手の指先の熱感が強いため、のぼせがあると判断した。他に腰椎付近が動作時に痛むため、骨盤周辺の緊張も見逃せなかった。この例では、腰椎周辺のこわばり(筋肉の緊張)を緩めることを最優先にした。骨盤周辺を緩める運動を先に行い、鍼による施術を行った。翌日の検診で頭位を確認できた。その後、頭位の安定、体調の安定、安産を目的とした施術を1回行い、計2回の施術で終了した。

著しい効果があったツボ

外関(左) 三陰交(右)

まとめ

35週と時期の条件は恵まれていなかったが、すぐに結果を得られた。「帝王切開でもよい」と開き直った態度が印象に残っている。精神的に安定していたことが、施術効果を高めたのかもしれない。少なくとも、精神的が安定しているほど、鍼灸の効果が高く出ることは間違いない。

[YFRS230309]

症例11

患者(妊婦)

経産婦(2人) 30代 群馬県

来院

2008年11月

妊娠週数

30週+0日

経過と特徴

25週で逆子を確認。その後の検診でも逆子のまま。1ヶ月ほど前から右腰に痛みがあり、仰向けで寝ていると痛みが強く出る。9月下旬に風邪をひき、気管支炎となる。夜間は発作のように咳き込む。

治療の内容と経過

経験上、咳が出る時は逆子になりやすく、また治りにくい、と言える。そこで、まず咳を緩解させることに主眼を置いた。数回の施術にも関わらず咳は緩解させることができず胎児も逆子のままであった。次に腰痛を緩和させて子宮の過剰な緊張を取り除くことで胎児の回転を補助しようと考えた。咳、腰の両面の調整を続け、徐々に症状は緩和されていったが、逆子に変化はなかった。35週を迎えた時には施術は11回に達していた。相談により、11回を最後に頭位への矯正を中止することになった。しかし、その後の電話で36週目で頭位を確認できたことを告げられた。

著しい効果があったツボ

不明

まとめ

30週というよい条件で施術を開始したにも関わらず、結果が得られずに試行錯誤を繰り返した。施術回数が11回に至ったのは、それまで妊婦さんが頭位を諦めなかったからである。気管支炎の問題が大きかったのか、それとも腰痛だったのかは判断できない。最終的に頭位になってはいるが、施術の結果と単純に処理できない。別に因子があった可能性も視野に入れなければならない。したがって、この症例は鍼灸の有効性を示すものにならない。妊婦さんの精神状態が「もう仕方ない」という段階に入り、帝王切開回避への強いこだわりから解放された結果と受け止めることもできる。諦めずに鍼灸を続けたことがよかったのか、諦めて心を安定させたことがよかったのか、本当に解釈が難しい症例である。

[YFRN071108]

症例10

患者(妊婦)

経産婦(1人) 30代 群馬県

来院

2008年12月

妊娠週数

28週+6日

経過と特徴

26週で逆子を確認。心配でネットで調べている中で鍼灸受診を決意。腹部の張りが見られるため、張り止めの薬を処方されていた。

治療の内容と経過

腹部を触診すると張りはほとんど感じられなかった(薬の作用か…)。頭部らしきは臍直上に、脚らしきは膀胱付近に位置していた。腹部の左側に緊張(張り)があった。腰部の緊張を解消させることに主眼を置き、施術を行った。翌日の検診で頭位を確認。初診時の帰りのクルマで激しく動いていたという証言から、施術直後に体勢が変わった可能性がある。頭位を確認した後も、姿勢の安定を目的に一度施術を行った。

著しい効果があったツボ

至陰(左右)

まとめ

28週と条件がよかったため、すぐに結果が得られたと思われる。腹部も柔らかく状態がよかったため、唯一緊張していた左側に施術のポイントを集中できた。このように問題点が限られている場合は、狙いを絞りやすくよい結果に結びつきやすい。日頃の健康管理がよい結果をもたらした例と言える。

[YFMS241208]

症例9

患者(妊婦)

経産婦(1人) 30代 群馬県

来院

2008年11月

妊娠週数

33週+2日

経過と特徴

28週で逆子を確認。30週で一旦頭位に戻ったが32週で再び逆子になった。31週で膀胱を蹴られる感覚が出てきた。

治療の内容と経過

脚の浮腫が目立ち、夕方になるとふくらはぎにだるさを感じる。腰痛と肩こりがあるとのことから、初回は腰痛と肩こりの緩和を目的とした。胎動は増えたが、2日後の検診では逆子のままであった。2回目は、足の浮腫に対する処置を中心に据え、頚部を緩めた。3回目では、臍上に足らしきもの感じ頭位になっていると推察できた。その翌日の検診で頭位が確認できた。

著しい効果があったツボ

足五里(左右)、合谷(右)、三陰交(右)

まとめ

もともと健康状態が比較的よく、腹部の状態も柔らかく状態はよいと感じた。頭位と逆子を繰り返した経緯があるため、処置をせずとも頭位に落ち着いた可能性もあるだろう。しかし、32週で経過を見守るのはリスクが伴うと考えられる。1〜2週間でそのままであった場合、矯正できる確率が下がってしまうからである。

[YFEI051108]

症例8

患者(妊婦)

初産婦 20代 群馬県

来院

2008年5月

妊娠週数

28週+1日

経過と特徴

来院の9日前に逆子(骨盤位)を産科にて確認した。当初、逆子体操をしていたが、「効果がない」という噂を耳にしてからは行っていなかった。膀胱付近に胎児に蹴られる感覚あり。時々腹部に張りを感じる。腰部に軽い痛みあり。また、顔が紅潮し手足が赤みがかっており、のぼせの傾向が見られた。

治療の内容と経過

腹部左側と左ふくらはぎ外側に筋肉のこわばりが認められた。腰痛との関わりが考えられる他、胎児の姿勢との関わりも深いと判断した。施術においては、腹部左のこわばりを解消させ腰痛を和らげるよう配慮した。1回目の施術後、当人は手足がポカポカするのを感じ「体質が変わったようだ」と表現した。2回目の施術前の触診で、頭部が臍より上で確認できなかったため、頭位(正常)に戻っている可能性が大きかった。頭位が安定するように3回目の施術を行った。3回目の施術の翌日の超音波で頭位を確認できた。

著しい効果があったツボ

至陰(左右) 百会

まとめ

このように早い時期(28週)では、自然に頭位に戻ってしまうケースも少なくない。しかし、逆子になる原因を母体が抱えていることは事実であるから、この時期に対処するのが最も安心と言える。また、精神面からも早い段階で矯正した方が安心して過ごせるというメリットがあるように思う。

[YFYO160508]

症例7

患者(妊婦)

経産婦(1人) 30代 埼玉県

来院

2008年5月

妊娠週数

30週+6日

経過と特徴

来院の約3週間前の検診にて逆子(骨盤位)を確認。その後、たまに逆子体操をしながら様子をみていたが正常(頭位)に戻らないことから来院。妊娠後、血圧が高いという事情で降圧剤(メチルドパ250mg)を服用中であった。腰痛があり、痛みのピークは1〜2ヶ月前だった。

治療の内容と経過

血圧が高いとの事情を来院前に把握していた。施術前、血圧測定を行った。薬を服用しているからか、若干高めというくらいで著しく高い数値はでなかった。施術中の測定では平均的な数値を示していた。興奮で血圧が高くならないようにリラックスを前提に施術を行った。ただし、施術は当院の標準的な方法で特別な施術は行っていない(標準的なものが安全範囲だからである)。来院2回目の触診で矯正に成功している感触を得た。その翌日、産科の超音波で頭位(正常)を確認したことを電話で告げられた。

著しい効果があったツボ

足三里(右) 三陰交 至陰

まとめ

事前の血圧測定で安全に鍼灸施術を行える数値であると判断した。そのガイドラインは設けてはいないが、著しい変調がみられる場合は施術を中止することも決断しなければならない。血圧に限らず、その時の体調を配慮しながら施術する責任が鍼灸師にはある。

[YFMT130508]

症例6

患者(妊婦)

経産婦(2人) 30代 群馬県

来院

2008年5月

妊娠週数

32週+5日

経過と特徴

産科で逆子(骨盤位)と診断された来院(逆子になった可能性のある期間は過去2週間)。鉄剤とウテメリンを産科で処方されていた。妊娠後から出現した腰痛以外、健康上の大きな問題はなかった。妊娠前から便秘。高校生の頃から片頭痛。

治療の内容と経過

腰痛、背中のこり感が気になる他、特に大きな特徴は見られなかった。腹部を触診すると、胎児が回転するための十分なスペースを感じた。冷えやのぼせも強くなかったため、熱のバランス調整は意識から外した。腰痛をケアしながら、胃腸の調子を整える意識で施術を行った結果、1回の施術で矯正に成功した(後日の電話で確認)。

著しい効果があったツボ

足三里(左) 至陰(左右)

まとめ

32週の後半で矯正の成功率が下がり始める時期ではあったが、触診した感触からゆとりが十分に感じられた。好感触を得た通り、後日矯正を確認できた。この症例では腰痛が子宮の張りを助長していると考え、腰痛の緩和を意識した。結果がすぐ出たことからその判断は正しかったと思われる。一言で腰痛といっても、逆子を誘発するタイプの腰痛があるのかもしれない。それを見極めることを今後の課題としたい。

[YFET030508]

症例5

患者(妊婦)

初産婦 20代 埼玉県

来院

2008年4月

妊娠週数

30週+1日

経過と特徴

悪阻(つわり)がひどかった時期、2か月間入院していた(体重減少)。現在も悪阻が残っていてお腹が空かない。夕食は食べず食事は昼のみの場合がほとんど。柑橘系の香りを嗅ぐと吐き気がする。便通も悪く、薬を使用して2〜3日に1回のペース。睡眠は熟睡間がなく夜中に何度も目が覚める。逆子と診断されたのは来院の1週間前。

その他

初診時の体重は妊娠前よりも3kg少ない

治療の内容と経過

胃腸の不調が目立っていたので、胃腸の調子を整えることに主眼を置いて施術に当たった。1回目の後、頭の位置が触診で確認できなくなった(直っているのか、直っていないのか判別しにくかった)。2回目の施術後、超音波(エコー)で頭位を確認できた。

著しい効果があったツボ

足三里(左)

まとめ

妊娠期には数々のトラブルを抱えている方であった。特に胃腸関連のものが多かったため、逆子も胃腸の不調が引き金になったと考えた。施術後すぐに頭位に戻っていたことから、この判断が正しかったと言える。

[YFYK230408]

症例4

患者(妊婦)

初産婦 30代 埼玉県

来院

2008年4月

妊娠週数

31週+3日

経過と特徴

来院の約2週間前に逆子と診断された。逆子体操を続けてきたものの直らないため来院。便秘、胃のもたれ、胸焼けを時々感じていた。他に、花粉症のため、鼻水、くしゃみなどの症状が出ていた。薬は便秘薬のみ。

治療の内容と経過

下半身(腰〜足)の冷えが顕著であった他に腹左上部の張りが目立っていた。また、脈診をすると左側の脈が弱く硬かったため左半身を施術のポイントにすえた。1回目の施術の翌日、産科を受診して頭位を確認できた。その後、頭位安定を目的に3回の施術を行い、初診の18日後にも超音波で頭位を確認した。

著しい効果があったツボ

内関(左)

まとめ

比較的遠方からの来院だったため(頻繁な来院は負担になるため)、翌日に頭位になったことはいっそう喜ばしいことであった。胸や胃の症状にスポットを当てた施術で劇的な効果があった症例で印象深い。

[YFYN010408]

症例3

患者(妊婦)

初産婦 30代 群馬県

来院

2008年4月

妊娠週数

35週+3日

経過と特徴

来院の9日前に逆子と診断された。それから逆子体操をしているが治らず。妊娠前からの腰痛があり、妊娠後は、ふくらはぎのこむら返り、便秘、腹部の張りが出現。便秘薬とウテメリンを処方されて服用していた。

治療の内容と経過

35週目であるため、触診しても胎児が大きく頭の位置も腹右上部にハッキリ確認できた。腰、臀部、膝下の冷えが強く、左側の冷えの方が目立つ。35週という条件は決してよくないため、冷え症の緩和と同時に筋肉のこわばりを緩めることを意識した施術を行った。1〜3回目の施術で変化が見られなかったが、4回目の翌日の婦人科受診(超音波)で頭位を確認した。

著しい効果があったツボ

足三里(左) 至陰(左右)

まとめ

35週目で条件がよくないながらも、矯正に成功できた例である。3回目の施術後に諦めずに4回目を行ったことも正解だったようである。ほぼ毎日のペースで施術したことも成功の要因になったと思われる。

[YFMN110408]

症例2

患者(妊婦)

経産婦(2人) 30代 群馬県

来院

2008年3月

妊娠週数

28週+2日

経過と特徴

就労中。来院の2週間前から逆子を確認。逆子体操なし。妊娠後、便秘と腹部の張り。日頃から手足の冷えが気になるが冬季は特に目立つ。その他の自覚症状として、肩こりと目の疲れ。平素から温かい飲み物(ほうじ茶)を飲むように心がけている。臍の右に頭部らしき感触、左下腹部に足らしき感触を得られた。その他、特記すべき事項なし。

治療の内容と経過

頭部は触診にて臍の右に確認できた。下半身の冷えはあるものの、強いものではない。就労中の妊娠に加え、逆子になったことで精神的な負担が大きいものと思われた。施術は、精神の緊張の緩和も意識して行うことした。1回目の翌日、胎児の活動が活発になり腹の左上にポコポコと蹴られるような動きを感じたと報告を受けた。2回目の来院時、触診をしてみると臍の上、左、右に頭部を確認できなかったので頭位に戻っていると判断した。しかし、その3日後、再び腹左下にポコポコと動く感触を得た。3回目、触診すると再び頭部らしき感触を右上に得た。4、5回目と施術を続け、6回目の触診にて頭位に戻ったことを確認した。

著しい効果があったツボ

腎兪(左)鍼 至陰 灸

まとめ

初回の翌日、頭位に戻ったと思われたが再び逆子になってしまった。28週という好条件にも関わらず5回の施術を要してしまったことは反省すべきである。後日の会話から、逆子が直った後も「再び逆子になったらどうしよう…」という強い不安を抱えていたことがわかった。実際にその不安が的中したことで不安が増したと推察できる。不安に早い段階で気がついていれば、再び逆子になることはなかったかもしれない。

[YFYS210308]

症例1

患者(妊婦)

初産婦 20代 群馬県

来院

2008年3月

妊娠週数

28週+3日

経過と特徴

産科で逆子と判明してから1週間後に来院。逆子体操は来院4日前から行っていた。触診で、臍の右上に頭、左下に足が確認できた。妊娠後、便秘になったため産科でクスリを処方されていた。2〜3日便通がないとクスリを使用。

治療の内容と経過

腰、臀部、下腿の冷えが強い。典型的な下半身冷え。施術では下半身の血流を改善させることに意識を置いた。1回目の施術直後、腰臀部の冷えは緩解したが、足の冷えが残った。2回目、膀胱を蹴られる感覚があるとのこと。触診で逆子を確認。ツボを変えて下半身を温める施術を行った。3回目、臍の上に頭部を触れることができなかったため、頭位(正常)に戻っている可能が高いと判断した。施術は1〜2回目と同じ要領で行った。後日、超音波で頭位に戻っていたとの連絡があった。

著しい効果があったツボ

陽池(左右)灸 三陰交(左)鍼 至陰(左右)灸

まとめ

28週という早い時期の来院であったため、矯正できる確率が高いパターンであった。ただし、下半身の冷えが非常に強く楽観してはいけない状況でだった。施術は典型的なパターンで行った。1回目の施術では結果が得られなかったが、その3日後に2回目の施術をしたのが功を奏したのか、2回目で大きな手応えを得ることができた。

[YFYO280308]

症例について
同じ病名や症状であっても効果には個人差があります。また、このページの症例は当院の経験であり、鍼灸の一般的な効果を意味するものではありません。

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症状ノート

『鍼灸師のツボ日記』