「お弟子さんですか?」と聞かれても「違う」と答えています。

院長の栗原です。

 

 

弟子は一人もいません

 

現在、養気院のスタッフは鍼灸師3名と、育休中の妻が1名です。患者さんの前に現れて施術を担当しているのは2名です。私と光山です。時々、姉妹院のカポスから研修(勉強)にやってきて賑やかになります。

もともと、10年以上、鍼灸師は私一人だったので、昔を知っている患者さんは、「おや?」と思うのでしょう。

「若い人はお弟子さんですか?」

と聞かれ、自分はもう若くはないんだなぁと思いながら、次のように答えています。

「従業員です」

聞く側に取ってみたら、どっちでもいいのかもしれませんが、弟子を持っている感覚も、自分が師匠である感覚もないので、こんな平たい回答をしています。

実際、徒弟関係というより、経営者と従業員の関係ですし、上司と部下という関係の中で仕事をしています。師匠と弟子とはニュアンスが違います。

どうして違和感を抱くのか分析してみました。一番の理由は、チームプレーで仕事をしているからです。私が見本になることはあっても、すべての場面で見本にはなっていません。

それぞれに役割があって、それを全うしようとしています。私が一人前で従業員が半人前ということではありません。

むしろ、私にできないことでも従業員はスラスラとやっています。

 

独立して得られる自由と失う自由

鍼灸を職人の世界と考えるならば「技術を磨いて一人前になる」という感覚かもしれませんが、私と従業員の関係において技術は部分的です。

鍼灸師にとって技術はとても大事ですが、技術だけを磨いても一人前にはなれません。「技術に自信がついたら独立する」という常識があるように思います。それを何となく患者さんも感じていれば、従業員は弟子であり半人前に見えてしまうかもしれません。

時代は変わってきています。ベテラン先生は「(徒弟制度があった)昔はよかった」と言います。でも、裏読みしてしまう私は「安い賃金でお手伝いしてもらえたからよかったんじゃないの?」と思ってしまいます。

ちょっと前までは独立しなければ食べていけない事情があったのです。だから、みんな独立を目指していたのです。鍼灸師としての仕事を全うし、その道を究めることと独立は、全く関係ありません。

もし、みんなが独立しなければならないなら、苦手なことも含めて何から何まで自分でやらなければなりません。こんなに効率の悪いことはありません。得意なことを担当しながら働ける組織が理想です。

「独立して好きなことをする」という人もいます。でも、独立して失う自由もあります。独立し自由を手にできるのは、自分が好きでない仕事を任せられる組織を作った人だけです。普通は、好きでない仕事が増えます。

私がそうでした。苦手なことをたくさんやってきました。

 

従業員こそ師匠である

弟子というと、私を目標に私のスキルをコピーするようなイメージがどうしても浮かんでしまいます。私と同じ鍼灸師は二人いりません。技術的に私より優れた従業員がいたってかまいません。いや、むしろそうあるべきです。

そもそも仕事は鍼灸施術だけではありません。いろいろ仕事があるので、私が苦手だと思うことは数えきれません。そんな仕事を従業員が易々とやっていること、珍しくありません。

鍼灸師としてのプライドは全員にあります。

私も現場で患者さんの施術をしているので、負けたくないという意地があります。スタッフ全員がそれぞれプライドを持っています。だから、技術はどんどん向上し、難しい症状にも対応できるようになっていきます。

最大のライバルは従業員です。彼らから教わること、気づかされることがたくさんあります。この学べる環境を味方にして、私個人も最高の技術で患者さんをお迎えしたいと思っています。