こんにちは。副院長の岡本です。
膝の痛みでいらっしゃる患者さんが大勢おられます。
その中の1人、少し長く通ってくれている患者さんから、「たまに痛みが出るくらいで、歩くのも問題なくなったし、調子がいいです」と言っていただきました。当初は「歩くこともままならない」とおっしゃっていたので、大きな前進です。「通った甲斐があった」と言っていただきました。
人体から「膝」だけを取り出せるか
さて、自慢話はこのへんにしておいて、わたしたちが膝を診るときに、何に着目しているのかについてお話します。
「そりゃ膝だろう」
という声が聞こえてきそうです。
もちろん膝の状態はチェックします。
しかし、どんな症状でもそうですが「痛みが出ているところに鍼をしたら解決」というわけではありません。それだったら、極端な話、患者さんが自分で鍼を買ってきて(禁止されていますが)、自分で打てばいいのです。 何しろ、自分の痛いところは自分が一番よくわかるのですから。
痛みが出ているところに鍼をしたからといって、必ずしも解決には至らないのが悩ましいところです。鍼灸師の中にも、それで悩んでいる人は数多くいます。
そもそも、「膝」って、どこからどこまでが「膝」ですか?
一休さんが鍼灸師だったら、「では人体から膝を取り出してみてください」と言うと思います。
テキトーな捜査は冤罪を生む
さて、わたしたちは痛みの出ている膝の状態をチェックした後に、主に下半身の状態を診ます。腰、臀部、太もも、ふくらはぎ、などなど、すべて膝に連なる動きを担うところです。
そうやって丹念に確認していくと、変に固まってしまっているところがみつかります。左右で硬さの違いがみられたりもします。
その「変に固まってしまっている」部位を「第一容疑者」として捜査対象にします。 しかし、「よし、じゃあこいつが犯人だ」と早合点して、第一容疑者である「変に固まってしまっている」部分に鍼をすればいいかというと、それもまた必ずしも正しいとは限りません。
さらに裏で糸を引いている「黒幕」がいるかもしれないのです。
「根本治療」って、本当にわかって言ってますか?
その「黒幕」をどう割り出すのかがわれわれの大事な仕事になります。
もちろん、その黒幕の背後に、まだまだ「真の黒幕」が控えているかもしれません。 しかし、それを永遠にたどっていくとキリがありません。
最終的には「宇宙が存在するせいでこの人の膝が痛い」という答えに行き着いてしまうからです。
したがって、本当は「根本治療」を謳うことは難しいのです。
なので、必ずどこかで捜査は打ち切る必要があります。
わたしたちの知識と技術の及ぶ範囲で原因を探り、鍼を使って必要な量の刺激を送り込み、筋肉の状態を変えるという行為をすることになります。
幸いなことに、それで大部分の方の問題は解決しています。
わたしたちはおおむね、そのような考えのもとで鍼治療に取り組んでいます。