研修を通して学んだことのまとめ

3ヶ月研修のまとめ

こんにちは。研修生の石井です。

今年の1月から行っていた研修もついに終わりを迎え、姉妹院のカポスへ旅立ちました。

研修中にお世話になりました皆さん本当にありがとうございました。

さて、今回ですが謎のベールで包まれた研修を通して学んだことを一部お伝えします。

 

目的によって触れ方を使い分けられるようになった

このタイトルだけ見ると「何を言っているのだ」と感じる方もいるかもしれません。以前の私は少なともそうでした。

ただ漠然と「ここ怪しいな、あ!ここだ!!」みたいな完全に感覚に頼った自分本位の触診をしていました。しかも、それはほぼ局所に限った触診です。しかし、実際には違います。一概に触診と言っても目的に応じて触れ方は違います。

体の情報を得るための触れ方、ツボを見つける触れ方、見つけたツボの最大緊張点を探す触れ方、圧痛点を患者さんと共有する触れ方、原因点を患者さんに知らせる触れ方など、実は目的により、触れ方や触れる面積を変えています。ここで大切なのは、なんのために今触診を行っているのか意識をすることです。

漠然とした触り方から意識をもった触れ方をすることによって、世界が開けました。

何気ない一言が患者さんを不安にさせていることに気づいた

患者さんは不安な気持ちを抱えた状態で来院します。「どんな場所なんだろう。私の症状は良くなるのだろうか。変なことはされないか」などの様に、治療に入る前に「ここは大丈夫なんだろうか」という不安感を少なからず持っています。その不安感を一つ一つ取り除くのは私達の仕事です。ですので、不安を取り除く立場にある側がさらに不安を与えるようではいけません。
このように偉そうにいう私ですが、何気ない言動で患者さんを不安にさせ、何度も注意を受けました。最初は「それぐらいいいやん。」と軽い気持ちで考えていたのですが、だんだんと栗原院長が伝えたいことがわかってきました。一人ではきっと気づけなかったことです。不安にさせない言動はもちろんですが、今は不安を取り除けるような言動をできるように意識しています。
そのためには患者さんが何を考えているか、相手の立場に立つことが大切です。このことに研修を通して気づくことができました。

 

鍼を正確に行うことの大切さを肌で実感した

鍼を行う際のツボの捉え方は鍼灸師によってまちまちです。500円玉くらいのサイズで例える人もいれば、ゴマ粒大の大きさで例える人もいます。なぜそのような違いが生じてしまうのでしょう。私も以前は500円玉まではいかないにしても、ツボを広く捉えていました。しかし、効果に安定性はありませんでした。効くときもあれば効かないときもある。

その原因は、500円玉のサイズの中にツボがいくつもあるからです。その一つ一つは別のツボなのですが、意識してみないとどれも同じに感じます。なので、なんとなく鍼をすると目的と違ったツボに鍼をしていることが多いです。鍼管一個分(2~3mm)ずらすだけで劇的に効果が変わることを身を以て体験しました。

以前の職場では一度に数十本鍼をしていたので、この気付きはなかったです。

話題からそれますが、「鍼をいっぱいすればええやん。数撃ちゃ当たるでしょう」と思う方もいるかもしれません。しかし、それはオススメできません。

鍼を行った箇所は必ず変化が起こります。それに伴い、関係している場所に自動的に変化を起こしてくれます。それにより改善方向に向かってくれるのですが、鍼を数十本、一気にしたらどうなるでしょう? 体はその刺激により何をしたいのか分からなくなり、はちゃめちゃな状態になります。そうすると、症状の改善に対して求めている自然治癒力が働かなくなります。

理想を言えば一本の鍼。しかし、なかなか理想通りになることは少ないのですが、鍼を正確にすることで、必要以上の刺激は控えたいものです。

 

アプローチ方法が増えた

発想の幅が物凄く広がりました。なぜ広がったのか、2つの視点からご説明します。

安全な方法を知った

1点目は痛い部位に鍼をする必要がなくなったことです。

私の中でこれはすごく大きいです。以前は腰痛の患者さんがいると必ず腰に鍼をしていました。この方法しか知らなかったからです。ただし、これはリスキーな施術です。痛みが起きて過敏になっているところへ別の刺激を加えると、痛みの増悪を引き起こす可能性が高まります。また、筋肉の緊張を一気に緩めるので施術後に立てなくなったという方もいました。

しかし、今はツボを使ってアプローチをすることができます。直接腰部に鍼をしなくても腰の治療をする術を手に入れました。適したツボに鍼をすると腰部の筋肉は緩まりますが、上記で述べたように立てなくなることはほぼありません。ツボは体の自然な反応を促してくれます。なので必要以上に緊張をとったりはしません。最低限の緊張を残しつつ、改善の方向へ導いてくれるのがツボの効果です。

発想の幅が広がった

2点目は、発想の幅が広がったことにより自由な診方ができるようになったことです。

例えば、不眠症の治療。以前は睡眠に効果があると言われるツボへのアプローチ、また経験的に学んだ肩こりの治療しか思い浮かびませんでした。

しかし、今では発想が増えました。不眠症といっても、なぜ不眠症になるか理由は多数あります。

手足への熱の放散ができないからか、就寝時の姿勢が落ち着かないからか、肩に力が入っているからか、頭に熱がこもりやすいからか、呼吸が浅いからか、など多数の原因が考えられます。

その原因を解決するために治療を行います。睡眠に効果があると言われるツボも万能ではない理由がここにあります。一概に同じ症状でも原因はそれぞれです。その原因に対してアプローチしないと症状の改善は難しいと思います。発想が広がったことにより、原因を考える習慣がつきました。

 

研修を通して「技術の向上より大切なこと」を学んだ

理念にもあるように技術を大切にしている鍼灸院です。なので、研修の中心は技術の向上だと思っていましたが、そうではありませんでした。

もちろん技術の指導もありますが、それよりも口酸っぱく言われたのが、「いかに患者さんを不安にさせないか」ということです。

私は良くも悪くも気持ちが表に出やすいです。なので、分からないことだらけに加え「ちゃんとしないと」という気持ちもあり、患者さんに不安を与えるような言動が多々ありました。

もっとも注意を受けたのはその部分です。自分中心になり、他人を気遣う余裕はありませんでした。しかし、何度も指導を受けるにつれ、「私は自分のことしか考えていないな」と気づきました。まだまだ完璧ではありませんが、この研修を通して「相手目線に立つ」の本当の意味を掴んだ気がします。相手目線に立つことで何が不安になるのかも知ることができます。

また、鍼灸師で大切なことの一つである触り方も以前に比べて良くなっていると周りの人にも褒められました。

正直、この研修ですべてが完璧にできるようになったかと言われるとそうではありません。

しかし、栗原院長が大切にしていること、意識していることを肌で感じることができました。研修の終わりは臨床のスタートラインです。

研修で学んだことを活かしつつ、姉妹院のカポスで臨床を行っていきます。