喉(ノド)の違和感・つまり感

すべての症例を掲載することが難しいため、一部を紹介します。

症例3 

患者

女性 40代 群馬県

来院

200X年6月

症状の特徴と経過

もともと仕事で大きな声を出すことが多い。3月に風邪を患い、それまで感じたことがないほどの激しい咳が出た。その後、咳と痰が残った。5月に高熱。この時に声帯ポリープが見つかる。薬を処方されポリープは消滅。しかし、声を出すとすぐに痰がからんでしまってしゃべりにくい状態に。痰を無理に出そうとすると咳き込んで呼吸が苦しくなる。風邪の引き始めに感じるような喉の痛みが常にある。内視鏡で見ると痰は多くない。療養のため休職中。

既往歴(これまでにかかった病気)

特になし

治療の内容と経過

舌の先端部、手掌、向こうずねに熱感あり。いっぽう、手の甲側の手首と腰は冷感。後頚部(背中に近いところ)が発汗して冷えていた。身体各部の体温が一定ではなく、そのパターンは風邪のひき始めに似ていた。薬で症状を強く抑えてしまった時によく見かけるパターンである(薬は風邪を治すためのものではなく症状を抑えるものであるため)。治療は風邪の初期症状に使う方法を用いた。精神的な影響も考慮し、精神的な緊張を和らげるように配慮した。初回の施術で、声が出しやすいと感じるようになり、足が普段より温かいと感じるようになった。痰は消えない。2回目で、直後症状が緩解したが、少し症状が元に戻る(期間が空いたため)。3回目の後、声の音量を大きくできるようになってきた。痰は変わらない。4回目の後、声がさらに出しやすくなり、痰が減った。5回目の施術時、症状のほとんどが消失したため治療を終了。

著しい効果が見られたツボ

外関、大椎、太衝

まとめ

症状がよくならないまま仕事の復帰が予定されていたので、精神的なプレッシャーも大きかったと思われる。今回の症例では、治癒を妨げているであろう精神を強く意識した。精神が緊張すれば、肉体に影響し頚の筋肉も例外ではなく緊張する。この緊張がより症状を不快なものにさせてしまう。精神的な緊張を和らげる処方を用いて、症状の変化を感じてもらうように心がけた。痰の原因となる熱は後から徐々に解消させるようにした。その結果、3週間でのどの違和感がとれた。

[YFRM170609]

症例2

患者

女性 20代 群馬県

来院

200X年4月

症状の特徴と経過

来院の1年前、声帯ポリープと診断される。手術をせずに治す方法を探し来院。小さい頃から扁桃を腫らすことが何度もあり、一年を通して痰(透明色)が出やすかった。中耳炎になることも多く高校生の頃までは耳鼻科に頻繁に通っていた。現在、声がかすれ、のどに違和感を感じ大きな声を出すと痛む。高音が出しづらい。

既往歴(これまでにかかった病気)

アレルギー性鼻炎、中耳炎

治療の内容と経過

舌は赤く、苔のはげが目立つ。このことから体に熱がこもっていることがわかる(東洋医学的見解)。余分な熱が体内にあると細胞を刺激してポリープになることがある。腹診でも上腹部に強い熱があり、体の上部に熱がこもっていることがわかる。熱の位置を検証した結果、上部の前側に偏っている。この熱を処理することで喉の調子を整えようと考えた。来院の約1ヶ月後には、引越が予定されており、1ヶ月間の集中施術を行うことになった。右の肩こりが強かったころから、右の後頚部に循環の問題があり、そこが喉に熱をこもらせる原因になっていると考えた。清熱(熱を冷ます)と肩こりの解消に同時に努めた。初回の後、痰が減り、舌の赤みがひいていた。2回目の後、のど痛が緩解した。3回目の後、のどの調子が上向きになったことを感じ、頚のコリ感が減った。ここで、患者は手術をせず鍼灸で声帯ポリープを治そうと決心。その後の通院中、何度も風邪をひき、その度にのどの調子は上下した。風邪に対する施術も行いながら1ヶ月後、風邪がすっかりよくなった頃、嗄声(かすれ声)がほとんど消え、高音が出るようになった。ポリープの行方を確認できないまま、引越のため通院が終わった。後日、電話で「1ヶ月後にはポリープが消え、すっかり良くなった」との連絡を受けた。

著しい効果が見られたツボ

後谿(右)、太衝(右)、風池(右)、少沢

まとめ

もともと、のど周辺に熱がこもってしまう体質が、声帯ポリープを生んでしまったと思われる。通院中の風邪症状も偶然ではなく、鍼灸施術に熱性の体が、余分な熱を外に追い出そうとする好転反応だったと考えることができる。このように風邪症状が他の症状を巻き込んで一緒に緩解してしまうパターンは時々見られる。風邪症状が好転反応であるか、単なる悪化であるかは見極めないといけないため、問診と経過観察には手抜きは許されない。清熱のツボが予想以上の働きをし、短期間で著しい好転が見られた印象的な症例である。

[YFMK080408]

症例1

患者

女性 30代 群馬県

来院

200x年9月

症状の特徴と経過

人混み、渋滞に遭遇すると動悸や不安感が出現するようになった。不安神経症と診断された。次第に頚や肩のコリ感を強く感じるになったため整形外科を受診。異常は見つからなかった。仕方なく、時々クイックマッサージに行っていたが、その場で気持ちよいだけで同日の夜には元通りに。マッサージでは「肩は凝っていない」と言われる。7月になり、喉仏の下に何かあるような違和感を感じるようになった。病院で検査しても何も見つからない。自律神経の問題と言われた。他で「鍼でよくなる」という話を聞いて来院された。

既往歴(これまでにかかった病気)

子宮内膜症

治療の内容と経過

頚や肩を触診すると、マッサージで言われているように筋肉は硬くない。しかし、柔らかい筋肉の奥には硬い筋肉が潜んでいた。また、背中(肩甲骨の間)の筋肉は硬かった。このような背中の異常が僧帽筋の深いところに影響し、肩にコリを感じていると考えた。喉の違和感は東洋医学では梅核気(ばいかくき)と言われ、気の巡りを改善させると解消する。経験的には、頚、肩がコリが緩むことで緩解するケースがほとんどである。この症例では、背部、手首、足首のツボを中心に問題となるコリを解消させた。2ヶ月悩まされていた症状が、1回の施術で完全に解消された。

著しい効果が見られたツボ

心兪、厥陰兪、合谷、太衝

まとめ

このケースのポイントは、深部のコリであった。表面の筋肉はそれほど硬くないため、一見すると凝っていないように見える。深部に存在するコリ感を局所では解消することは難しい。東洋医学における経絡を駆使することで、他の部位(手足など)から和らげることが可能である。

[YFYN030908]

梅核気(ばいかくき)について

梅核気は東洋医学の言葉で「喉に梅の種が詰まったような気がする症状」です。飲食物がひっかかることはありません。西洋医学では、「ヒステリー球」「咽喉神経症」「咽喉頭異常感症」と言われ、精神的な問題で起こると考えています。女性に多い症状です。

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