腰痛・坐骨神経痛
すべての症例を掲載することが難しいため、一部を紹介します。
症例26 ぎっくり腰
患者
男性 40代
来院
2017年7月
症状と来院理由
1、2ヶ月前から朝起きた時に腰痛を感じていた。特に洗面所で顔を洗う際に痛みが強い。来院5日前の午前、前かがみになると腰に激痛が出現し動けなくなった。午後に整形外科で痛み止めの注射を打った。その日から3日間、自宅で安静にしていると痛みが軽減してきたためコルセットをしながら仕事を再開した。
その後、ソファーに腰掛けると痛みで立ち上がれなくなる。動いているうちに、動けるようになるが痛みは消えない。特に前かがみで痛みが強くなる。
治療と経過
ソファーに腰掛けると腰痛が悪化していることから、大腿部(太もも)の裏側の圧迫が引き起こしていると考えた。大腿部の裏側に鍼をすると腰部全体の痛みが軽減した。痛みが臀部の上部に残ったため、背中のツボを使ったところ軽減した。良い状態が続き、2診目の際には、朝に痛みを感じる程度。前回の方針に肩上部に鍼を加えると、残っていた腰の痛みが消失。
使用した主なツボ
殷門R T11(3)R 巨峻R
考察
大腿部の緊張(こわばり)が腰痛を引き起こしている典型であった。ソファに座ると悪化するなどの状況から推測できる。実際の施術では推測を確かめるように触診した。理論(腰痛のメカニズム)と実際の状態が一致していたため、基本通りに施術をした。速やかに好転した症例であるが、原因を見落とすと改善の機会が遠のいてしまうこともある。[YFSH050717]
症例25 ぎっくり腰
患者
男性 50代
来院
2017年6月
症状と来院理由
昨晩、しゃがんで床の荷物を持ち、立ち上がる瞬間に腰に激痛を感じ動けなくなった。患部を冷やすと少しずつ動けるようになった。今朝、目を覚ますと腰が痛くて立ち上がれなかった。立ち上がりは困難だが、ゆっくりなら歩行はできる。痛み止めを服用したが痛みは治まらないため来院された。
治療と経過
子供が産まれ抱っこする機会が増えたとのこと。その腰への負担が仙腸関節に問題を起していると疑った。 仙腸関節と関わりのある肩甲骨のツボに鍼をすると、直後から立ち上がりがスムーズにできるようになった。しかし、直立しようとすると腰が伸びきらない。足のツボに鍼をすると腰が伸び、直立できるようになった。さらに肘のツボに鍼をすると痛みなく動くことができたので施術を終了した。
使用した主なツボ
肩稜R 大腰R 曲池R
考察
腰に負担をかけていた原因が明確であったため、ポイントを仙腸関節に絞り込むことができた。子供を抱っこした際の負担が肩甲骨にかかり、仙腸関節に波及していった。身体のどこに負担がかかり、どのように波及していくかを見極めることが大事である。[YMYN100617]
症例24 反るとビリっとする腰痛・脚のしびれ(坐骨神経痛)
患者
男性 50代
来院
2016年10月
症状と来院理由
2016年4月に草むしりと芝刈りをした。終わってから横になって休んでいると、次第に腰の痛みが出現。腰を反るとビリッと痛むため、「ぎっくり腰」ではないかと思った。
通勤で電車に乗ることが多く、「椅子にもたれていると、骨盤が圧迫され右脚が痺れてくる」とのこと。
以前に腰痛の治療で通院していた鍼灸院が移転していて連絡が取れなかった。腰痛専門の治療院で、腰の痛みは楽になったものの右脚の痺れが残る。「移転した鍼灸院の治療法が合理的だった」という理由から、その治療院で行われていた「活法」をインターネットで検索し、当院のことを知り来院された。
治療と経過
長時間椅子にもたれると症状が悪化することから、臀部に問題があると考えた。右側に重心をかけた際に右臀部に痛みが出現し、痺れは右脚の外側に出現した。足のツボに鍼をしたところ、即座に痛みが軽減した。直後に腰を反る動きを確認したところ改善していた。初回治療の翌日には、腰の痛みがさらに軽く、座った際の痺れが軽減。しかし、症状が軽減したことで、「以前から右腕の痺れが気になっていることを思い出した。」とのこと。このことから、頚部と腰部の関係性を疑った。頚のツボに鍼をすると、右腕の痺れが消失。腰の状態を確認すると、痛みはほぼ消失。若干の右足の痺れを残す程度となった。その後、治療を続けることで、腰の痛みが消失、足の指先に痺れを残す程度になった。6診目の治療後、症状が消失。計7回の治療で終了した。
同時に治療した症状
右腕のしびれ
使用した主なツボ
申脈R L4(1)R C6(1)R
考察
今回の症例は頚部の問題がポイントとなった。右腕の痺れの症状から腰部と頚部の連動性の問題が引き起こしたものだと判断した。頚部の問題を解決したことで右腕の痺れが消失、腰の状態も格段に改善された。別々の症状に見えて、実は裏側で関連していることがある。その場合、どちらか一方を診るだけでは根本的な解決にならない。一見関係のないと思われる症状を結びつけるには、詳細な観察が必要である。[YMMI261016]
症例23 ぎっくり腰の後に残った腰痛
患者
女性 40代
来院
2016年 12月
症状と来院理由
11月初旬に腰に突き刺さるような痛みが出現(ぎっくり腰)。痛みがひどく体勢を起こすことができない。整体院で背骨の矯正を行い、動ける程度に痛みは改善。しかし、4回ほど通うが前屈時の腰の痛みが取ず、すっきりしない。治りきらない不安があり、以前に通院歴のある当院に相談があった。また、2週間前から胃や喉の調子が悪くなっていることも心配されていた。
治療と経過
ぎっくり腰の発症時の経緯を詳しく聞くと、「通っているジムで体を動かしていた際に、右腕を挙げると肩のスジが痛む感じはあった」とのこと。この肩の痛みとぎっくり腰は、ともに脊柱に原因があると判断した。脊柱を整えるツボに鍼を行うと前屈時の痛みが軽減。同時に肩の痛みも改善。次いで、胃と喉に注目した。腹部の触診を行うと、緊張している部位をみつけた。手のツボに鍼をすることで、緊張が消失。同時に喉の周りの緊張も消失した。腰を動かし状態を確認してもうと「何も違和感を感じない」とのこと。1回の治療で
終了した。
同時に治療した症状
胃と喉の痛み 右肩痛
使用した主なツボ
九稜R 玖路R 四瀆R
考察
1回の治療で症状が完全に消失したケース。問診の際には、「症状が出る前に何か心当たりはありませんか?」と尋ねた際には思い出せない様子だったが、触診の際に「関係ないかもしれませんが…」とジムで感じた肩の痛みの話を切り出された。この話が切り札となって原因がすぐさま特定できた。ぎっくり腰と肩の痛みのように、一見関係のないように考えられる症状も、原因が同じ場合がある。ささいな事でも話してもらいやすい雰囲気をつくることの大切さを再認識した症例であった。[YFTR071216]
症例22 前屈で痛む腰痛と膝下がビリビリする
患者
男性 40代
来院
2016年11月
症状と来院理由
来院の前日、体力測定(シャトルラン・反復横とび・腹筋など)を行った。終わってすぐに腰に違和感を感じ、自宅に帰宅する頃にはひどくなり痛みが出現、前屈みになると痛みが増悪する。膝下が一時的にビリビリと痺れ、「坐骨神経痛かもしれない。」と不安になったため来院。
治療と経過
腰の動きに関係が深い太ももとふくらはぎを触診すると、ある部分に緊張がみられた。その緊張を緩解するために鍼を行うと、前屈時の痛みが軽減した。取り切れない痛みは、腕の疲労が原因と考え、肘のツボを術者が押圧しながら前屈してもらった。すると、さらに痛みが軽減した。仕上げとして、太もものツボに鍼をした。腰を動かしても痛まなくなった。また、膝下の痺れも出現していない。残った違和感は、休息を取って自然回復を待つよう指示した。
同時に治療した症状
なし
使用した主なツボ
上懸鐘LR 尺前LR 殷門R
考察
体力測定で脚や腕が疲労したことで筋肉が緊張し、全身の調和が乱れ、腰に負荷がかかり痛みに発展したと考えた。疲労で筋肉が緊張した場合、全身に原因が分散していることが多く、一度の施術で全ての症状を取り切れないケースがある。仮に、全てを緩和させようと何十本も一度に鍼をすると、患者さんの身体に余計な負担をかけることになる。症状が広くある場合でも、施術はポイントを絞ることが大切だ。さらに、施術で完結させようと思わず、休息を促すことで自然回復を待つことも大事である。患者さんに余計な負担を与えないように施術を組み立てられるかは、専門家としての我々の腕にかかっている。[YMKM081116]
症例21
患者
男性 40代 群馬県/太田市
来院
2014年5月
症状の特徴と経過
もともと腰痛はあったが生活に支障が出る程ではなく過ごしていた。3週間前、椅子から立ち上がった瞬間に右腰(臀部に近いところ)に違和感が出た。痛みが強くなることがなかったので、そのまま1日を過ごした。しかし、翌日になると右腰の痛みが強くあり、椅子から立ち上がる動作では、すぐに腰が伸ばせない。ズボンや靴下を履く動作やクルマの乗り降りで特に痛む。ソファーで深く腰掛けても痛みが強くなる。この日に予約の電話を頂いたが、定員を超える状況で受けることができなかった。整体に3回通院して症状は半分ほどに落ち着いた。残っている症状を取るために、改めて当院に予約。
同時に治療をした症状
なし
治療の内容と経過
この症状で特徴的なのは「腰が伸ばせない」ことである。伸ばせない状態の多くは仙腸関節に問題が生じている。仙腸関節と関わりの深い肩のツボに鍼をした。伸びるようになったものの、右腰の痛みが残っているため、続けて項のツボを使って仙骨の調整を行った。効果が高かったため、安定した状態を維持するために背中と仙腸関節のツボに鍼をしたところ、症状のほとんどが消失した。
使用した主なツボ
五稜R C4(2) T5(2)R 上髎R考察
上体を前屈してから戻す際に痛みが強く出る場合は、仙腸関節の異常であることが多い。これに対して、真っ直ぐな姿勢から上体を反る動きができない場合は腰椎の異常であることが多い。仙腸関節は肩甲骨の動きと連動しているため、上半身の緊張が度を超えると仙腸関節にトラブルが生じるケースは珍しくない。座った状態で症状が悪化していることからも、下半身(脚)から負荷だけでないことがわかる。
[YMSK230514]
症例20
患者
男性 20代 群馬県/安中市
来院
2014年5月
症状の特徴と経過
3日前、8ヶ月の子供を抱っこしてしばらく歩いていた。腰に疲労感を感じた。翌日(2日前)、朝起きた時点では問題なかったが、日中、床に座っていて立とうとした瞬間に痛みが右臀部に走った。その翌日(昨日)、整形外科を受診して骨の異常はないと診断され、電気を流す治療をした。その後、当院の噂を聞いて来院。寝ている姿勢で脚を伸ばす際、腰を捻る際、座っていて左の坐骨を浮かせる際に痛みが強い。腰椎5番付近に前屈と背屈(上体を反る)で痛みが強くなる。
同時に治療をした症状
なし
治療の内容と経過
最初に着手したのは臀部の痛みである。胸椎12番目のツボに鍼をすると、臀部が緩んで痛みが軽減した。腰椎5番の痛みは残っていたので、膝のツボを使用して背屈を改善した。若干残っている痛みに対して、頚椎7番のツボを使ったところ痛みが完全に消えた。前屈時の痛みも消えた。
使用した主なツボ
T12(1)R 玉天R C7(1)R考察
胸椎12番は、胃腸の調子と関わっているため、改善後に胃腸に負担をかけた覚えがないか尋ねたところ「心当たりがある」との回答であった。子供を長時間抱っこするなどして腰部、臀部に負担をかけたことが関係あることは否定できないが、胃腸の負担が重なって臀部の痛みとなった可能性が十分にある。腰椎5番付近は、臀部の問題が二次的に波及した症状かもしれない。臀部の筋肉の働きが低下すると腰椎に負担がかかるからである。
[YFHC160514]
症例19
患者
男性 30代 埼玉県/本庄市
来院
2014年5月
症状の特徴と経過
2013年7月、右腰、右脚全体にしびれが出現。きっかけに心当たりなし。指圧、鍼灸で症状が半減したが、その後に大きな改善は見られず。現在、腰部に鈍痛。腰を反ると窮屈な感じがする。上体を左に倒すようにすると右腰につっぱりを感じる。捻りの多いスポーツは怖くて出来ないが、ゆっくりとしたストレッチでは問題を感じない。右足首の内側にピリピリしたしびれがあり、来院時には消えていたが、大腿の前面の外側に違和感が出現することがある。朝は調子が良く、夕方になるにつれて調子が悪くなる。運転中に足のしびれが強くなる。
同時に治療をした症状
なし
治療の内容と経過
この症状で最初に着目したのは「腰を反ると窮屈」という現象である。腰椎5番に異常があると考えた。この腰椎5番は頚椎7番との関係が深いため、最初は頚椎7番を動かすように働きかけた。すると、腰の反りが改善した。続けて膝のツボを使ったところ、さらに改善。次に着手したのは、右腰のつっぱり感。大腿の後側に問題があると考え、そこに鍼を行ったところ、右足首のしびれがハッキリした。そのまま10分待っているとしびれが消失。再度、腰を反る動きをテストしたところ、腰椎5番の位置に違和感があった。胸椎5番のツボを用いたところ消失。
使用した主なツボ
C7(1)R 玉天R 殷門R T5(1)R考察
1年近く症状が消えずに残っていたのは、問題が見落とされていたからと言える。そこには2つの問題があったと考えることができる。1つは腰が反りにくいという動きの不具合。もう一つは大腿後側の強ばりである。大腿後側はクルマのシートで負荷がかかりやすく、運転中に悪化するという特徴が見られる。
[YMAH170514]
症例18
患者
女性 30代 群馬県/伊勢崎市
来院
2014年5月
症状の特徴と経過
昨年の前半のある日、突然腰の左側が痛むようになった。疲れてくると痛みが横に広がるように悪化する。右側にも軽く痛みがある。安静時には痛みがなく、クルマの乗降時に痛みが強くなるため息を止めて乗り降りをしている。寝返り時も増悪。起床時は痛みが強いが動いているうちに痛みが軽減し、夕方になると再び痛みが増幅する。来院時には強い痛みはなく、立位で上体の側屈をすると痛みが出現するところに異感覚が出現する程度。
同時に治療した症状
なし
特記すべき既往歴
特になし
治療の内容と経過
仙骨部から放散している痛みであると判断。上髎穴に鍼をすると側屈時の違和感が7割消失した。いくつかのツボを試し、最終的に腓骨(膝)の調整を行ったところ、残りの3割が消失し、すべての違和感が消失した。症状が残った場合は引き続き治療を行うという約束で終了。
著しい効果があったツボ
上髎L C4(4)L 玉陽L
考察
約1年程度続いていた症状ではあったが、問題点が絞り込めたため速やかに症状が消失した。施術時の痛みが強くないため、施術前に気になる動きを探して施術後と比較した。施術時に痛みが軽い場合は問題点が見つかりにくいので注意して行うようにしている。
[YFHK100514]
症例17
患者
女性 20代 群馬県/太田市
来院
2013年6月
症状の特徴と経過
仕事を始めた2年くらい前から腰に痛みを感じるようになった。動作にも体勢にも関係ない。日によって痛みが強かったり弱かったり。痛む位置は腰椎の2番くらい。4月から整形外科に通い、筋肉を弛緩させる薬と痛み止めを処方された。服用すると痛みが軽減。
既往歴(これまでにかかった病気)
特になし
治療の内容と経過
触診すると腰椎2番の右側に硬結(こわばり)があった。腰椎2番の動きが悪いと判断し、下腿(ふくらはぎ)にあるツボを使って動きの改善を計ったところ、直ちに痛みが消失した。1回の施術で終了。
著しい効果があったツボ
築賓(右)
まとめ
2年も患っていた症状であるが、特定の腰椎の動きが改善したら直ちに痛みが消失した。ふくらはぎの触診でも左右でハッキリとした違いが認められた。この症例は、ふくらはぎの動きが悪い(自覚なし)限り、取れにくい腰痛であると言える。このように下腿の具合が腰に及んでいる例は少なくない。
[YFIN040613]
症例16
患者
女性 40代 群馬県/伊勢崎市
来院
2013年4月
症状の特徴と経過
2月の末、旅行先のエステで腰を強く押されてから腰が痛くなった。2、3日後には左脚の大腿側面と膝下の前にしびれが出現。また時々アキレス腱の上に痛みが出るようなった。同じ姿勢を続けていると腰全体に痛みが広がってくる。病院でレントゲンを撮り「椎間板ヘルニア」と診断された。痛み止めの飲み薬と湿布で治療をしていたが改善しないため当院に来院。
既往歴(これまでにかかった病気)
白血病、橋本病
治療の内容と経過
左側の仙腸関節の動きを改善させるために、左の胸椎の10番にアプローチした。次に、下肢に出ているしびれの改善を目的に、腰痛の5番にアプローチした。症状は出ていない右脚であるが大腿部後面に硬結(筋肉の硬さ)があるため、鍼で緩めて動きの改善を促した。施術の直後に症状がほとんど取れた。1回の施術で終了。その後もしばらくは症状が出ていない(後日、ヒヤリングにて確認)。
著しい効果があったツボ
夾脊Th12(左)、夾脊L5(左)、殷門(右)
まとめ
「椎間板ヘルニア」と診断された症状ではあるが、1回の施術で完治していることから、そもそもの診断を疑わなければならない。脚のしびれとアキレス腱の上の痛みは坐骨神経痛で間違いないであろう。このしびれが骨の問題で起きているのであれば1回の施術で緩解することはあっても完治するのは難しい。診断名をよい意味で裏切れた症例である。
[YFKH160413]
症例15
患者
女性 50代 群馬県/玉村町
来院
2013年4月
症状の特徴と経過
10日ほど前、介護をしている最中に左腰から脚の外側にかけて痛みを感じ、休んでも痛みは治まらず増し激痛に発展。歩くことも立ち上がることもできない状態になった。朝起きた時は治ったと思うくらい痛みが軽いが、洗面所で前かがみになると、痛みが強くなり持続してしまう。左脚に体重をかけると痛みが増す。
既往歴(これまでにかかった病気)
甲状腺腫瘍
治療の内容と経過
痛みが出る姿勢を施術前に再確認すると、証言通りに前屈で痛みは発生。後屈と回旋でも痛みが発生。また、左脚に体重がかかった時も痛みが強くなることを確認。左脚に負荷をかけて痛みが増すことから脚〜腰にかけての問題が潜んでいることを推測。大腿の裏側を緩める鍼を行ったところ、痛みのレベルが下がり、前屈の可動域が広がった。次に考えたのは「介護中に痛みが出てきた」という証言である。介護では相手を抱きかかえる動作が多いため、腕(肩甲)から腰に負担をかけてしまうケースが目立つ。そこで、肩甲骨と腕の中間点に鍼をして緩めると、腰の可動域がさらに広がった。動作時の痛みも大幅に軽減。
著しい効果があったツボ
殷門(左)、肩貞(左)
まとめ
広範囲に痛みが及び、しかも激痛ということで坐骨神経痛を疑ったが、じっくり観察したところ、神経根(坐骨神経が始まる腰椎の付近)と梨状筋(坐骨神経が通る近くの筋肉)に問題はないと判断。動きを改善させることに専念したところ症状が大幅に改善した。
[YFHK080413]
症例14
患者
女性 60代 群馬県/桐生市
来院
2013年1月
症状の特徴と経過
慢性的な腰痛
20歳頃、重い物を持った時にギックリ腰になった。それから、年に数回のギックリ腰を起こすようになり、慢性的な腰痛に。特に寒い季節に悪化しやすい。「3年前のレントゲンで4ヶ所つぶれている」との話。今回も腰痛が悪化したために来院。鍼灸の受診は初。
他の症状
肩こり
既往歴(これまでにかかった病気)
胃潰瘍/糖尿病、高血圧、高脂血症(現在治療中)
治療の内容と経過
常に痛みを感じ、特に腰をそる動作ができない。左右の大腿部の外側と後側に強い緊張がある。施術で緊張を和らげると直ちに痛みが緩和した(10→2〜3)。初回の施術で、今回悪化分の腰痛がほぼ消えたので、40年前からの慢性腰痛の治療に着手した。調べてみると、腰椎の4番と5番の周辺の筋肉に強い緊張があり、正しく可動していないことがわかった。ここの可動域を出す施術と同時に、背中のこりを解消させる施術を行った。このような方針で数回の施術を行った。初診から5回の施術で、慢性腰痛まで完治した。腰をそることもできるようになった。
著しい効果が見られたツボ
殷門、束骨
まとめ
今回の悪化(急性腰痛)の原因は、大腿部の緊張によるものと考えた。一方、慢性的な腰痛は腰椎の可動域が失われていたために起こっていると考えた。足の小指近くのツボ(束骨)を使ったところ、腰椎周辺の筋肉の緊張を解くことができた。40年間の慢性腰痛が4〜5回の施術で完治したことは、大きな成果と考えてよいだろう。
[YFEOI040113]
症例13
患者
男性 30代 群馬県/伊勢崎市
来院
2012年7月
症状の特徴と経過
腰痛(右)+臀部痛(右)
右の腰から臀部にかけて痛みが出現。立位、座位、どちらでも前屈が若干できる程度(約10〜20度)。激痛ではないが動きに制限があるため、仕事や生活に支障が出ている。1年半以上前に腰痛で当院に来院し回復。今回は、腰の他、臀部に痛みが出ている。
他の症状
特になし
既往歴(これまでにかかった病気)
腰痛(当院での治療歴あり)
治療の内容と経過
座位での前屈で痛みが出ることから、上半身、特に背部の緊張が腰に影響し可動域を制限し痛みを出現させていると考えた。背中のツボ3つ(すべて右)に鍼をすると、痛みがほぼ消失。前屈を開始する瞬間に違和感があったので、足のツボ1つ(右)、臀部のツボ1つ(右)に鍼をすると痛みがが消えた。前屈時すると、大腿後側(ふとももの裏側)に、つれるような軽い痛みを感じるようになったので(他の部位の痛みが消えたため感じるようになった)、肩甲骨と肩の近くにあるツボに鍼をすると消失。
著しい効果が見られたツボ
陽綱(右)、夾脊(胸椎9番)、心兪(右)、束骨(右)、梨状筋(右)、肩貞(右)
まとめ
鍼をするたびに痛みの位置が変わったが、この現象は2番目、3番目の問題点が浮き上がったと考えられる。軽い痛みでも我慢していると体に負担がかかり、二次的三次的な不具合を引き起こすことがある。今回の症例はその一つと考えられる。
[YMKI210712]
症例12
患者
男性 20代 埼玉県/熊谷市
来院
2012年6月
症状の特徴と経過
腰痛(腰椎の4〜5番のすぐ右)
仕事(消防士)でのトレーニングで無理がかかったのか、2週間くらい前から腰に痛みを感じるようになり、前屈(立位+腰掛け)で痛みを感じる。朝起きたときの痛みが特に強く、ズボンや靴下をはくような動作の際の痛みが気になる。仕事中も痛みは消えないが、夢中になって体を動かしているため、痛みと強く感じることはない。
他の症状
特になし
既往歴(これまでにかかった病気)
特になし
治療の内容と経過
痛みがあるものの、日常生活ができ、仕事もできることから、痛みの部位には損傷がないと考えた。患部に触れてみると、左右差があった(右の方に圧痛)。大腿二頭筋を触診してみると、右側の内側が張っていた。この筋肉に異常な緊張があることで、腰部への負荷が大きくなっていると考え、鍼によって緩めた。すると、すぐに前屈の可動域が広がり、痛みが軽減した。ただし、完全な状態には及ばないことから、第二の問題点を背部に求めた。胸椎の5番と7番の右側周辺に硬結があり、こららの胸椎が正常に動けないことが腰部に影響していると考えた。鍼によって緩めるとすぐさま可動域が広がり痛みが消えた。
著しい効果が見られたツボ
殷門の内側(右)、夾脊穴<5番・7番>(右)
まとめ
腰痛としては軽いものであったが、求められている状態は、痛くない腰と、強い負荷に耐えられる腰であったことから、動きの改善を入念にチェックした。この症例では、痛みの問題が下肢と背部の2ヶ所にあったと言える。
関連記事:『これでも体育会なんです。(鍼灸師のツボ日記)』
[YMOY050612]
症例11
患者
男性 30代 群馬県
来院
2012年6月
症状の特徴と経過
腰痛(右臀部の上部周辺…位置はハッキリしない)
子供と肩車など遊びをした翌日の朝、腰の痛みで起きるのが辛かった。来院時、歩行時にも痛む様子がわかり、ベッドで仰向けになると痛みが強く出た。日常的な動作(立つ、しゃがむ、捻る)でも若干の痛みはあるが、特等的なのは仰向け状態で痛みが激しくなることである。
他の症状
特になし
既往歴(これまでにかかった病気)
特になし
治療の内容と経過
最初に痛みの患部に近い臀部(中殿筋の右側)に鍼をすると、すぐさま痛みが軽減した。軽減したものの仰向けになると痛みが増大することから、根本的な解決にはなっていないことがわかった。根本的解決を計るために、胸椎の9番の棘突起の際に筋肉のこわばりに鍼を行った。すると、その直後から痛みを感じられなくなった。症状が完全に消失。ここまでの施術時間は5分。その後、良好な状態を安定させる目的で右背部に鍼を加えた。
著しい効果が見られたツボ
胸椎9番の棘突起右(挟脊穴)の右、中殿筋(梨状筋の中央上端のすぐ上)
まとめ
仰向けになると痛みが強くなるという典型例で、こういった場合の問題点は背中(胸椎)にあることが多い。症状がこじれていなかったこともあり、すみやかに痛みが完全消失した。即効性が印象に残る症例である。
[YMTT020612]
症例10
患者
女性 40代 群馬県太田市
来院
2011年12月
症状の特徴と経過
脊柱起立筋の左側が痛い
2日前にクルマで長時間の運転を行った。そのまま夜勤をして翌日の昼に起きようとしたところ起き上がる時に痛みが出た。その夜ストレッチをしてから寝た。翌日未明にトイレに行こうと思ったら一人で行くことができずに助けを借りた。寝返りも難しいほど痛みが強くなったが、昼になるにつれて痛みが徐々に和らいできた。夕方に来院。この時痛みのピークは既に過ぎており、一人で歩行ができる状態。しかし、前屈時に痛みが出る。特に腰掛けた状態では前屈がほとんどできない。
他の症状
特になし
既往歴(これまでにした怪我)
特になし
治療の内容と経過
痛みの局所(脊柱起立筋の腰椎1〜4番の高さ)に触れると、腫れてこわばっていた。軽く押すだけで痛みを感じた。局所に軽い炎症があると判断した。次に注目したのは、立位での前屈よりも腰かけた状態での前屈が難しいという点。立位と坐位で痛みが異なる場合は、施術ポイントも異なる。まず試みたのは脚の付け根の後の部分(坐骨の付近)。こういったケースでは、ここの筋肉のこわばりを解くと劇的に症状が変化する場合が多い。試してみると、症状は和らいだが劇的といえるほどではなかった。次に背中(脊柱起立筋)のこわばりを解くと症状がいくぶん和らいだが劇的ではなかった。肩甲骨の内縁の下方にこわばりがあったので、そこに鍼をすると大幅に痛みが緩和し可動域が広がった。残っている痛みを探すと、右脚に体重を乗せて上体を右に捻った時に痛みが出ることに気がついた。右脚のアキレス腱のこわばりを解くように鍼をすると、右脚に体重を乗せても痛みを感じないようになった。その代わりに、左脚に体重を乗せた時に痛みを感じるようになった。左のふくらはぎのこわばりと解くと痛みを感じなくなった。さらに残っている痛みを探すと、腰掛けた上体で左脚を引き上げた時に左の股関節の付近に痛みを感じたので、大腿の裏側に鍼をすると痛みが解消された。最終的に動作がラクになり若干の痛みを感じる程度まで回復した。残った痛みは翌日には感じられなくなるであろうと思い、治療は1回で終了した。
著しい効果が見られたツボ
譩勝ニ(左)、承山(左)まとめ
長時間の運転で坐骨周辺の圧迫によって症状が出たと考え施術をしたが、結果的には肩甲骨の影響が大きかったと思われる。肩甲骨周辺の筋肉も長時間の運転で疲労することが多い。ただ、肩甲骨単独であるとも考えにくく、アキレス腱やふくらはぎの疲労も重なって起きた腰痛だと考えられる。長時間の運転では右足でアクセルを操作するため右のふくらはぎに疲労が溜まりやすい。筋肉疲労に睡眠不足と夜間の寒さ(冷え)が重なったために引き起こされた腰痛だと思われる。
[YFMO191211]
症例9
患者
男性 30代 群馬県
来院
2011年10月
症状の特徴と経過
腰背痛
5・6年前から腰背部が常に痛む。長時間座ったままいると痛みが増してくる。日常生活も支障がない程度の痛み。動作試験をしてみると、立位で上半身を捻る動き、上体を反らす動きで痛みが強くなった。右に捻ると左腰に痛み、左に捻ると右腰に痛む。痛みによる可動域が制限されているため、大きく捻ることも反り返ることもできない。散歩をすると若干軽くなるような気がする。
他の症状
お腹にガスが溜まりやすい
既往歴(これまでにした怪我)
特になし
治療の内容と経過
気になる部位は、腰背部(脾兪、胃兪、三焦兪付近)を指している。日常生活に支障がないことから、骨の問題は疑わず筋肉レベルで考えることにした。腹部を触診すると、自覚症状の通りガスの存在を感じた。胃腸の活動レベルが低いと判断した。胃腸と腰背部は密接な関係があるため、胃腸の不調が腰背部の症状に関与していると考えた。胃腸の反応が出やすい臀部(梨状筋)に鍼をすると、可動域が広がり痛みが軽減した。左胃兪の上の方(左胆兪付近)に筋肉のこわばりが残ったため、陽陵泉に鍼を行った。仕上げとして大腿の裏側にあるツボ(殷門)に鍼をすると症状がほぼ完全に消失した。
著しい効果が見られたツボ
梨状筋にあるツボまとめ
腰背部の痛み、胃腸の調子、臀部の疲労が重なって起こった症状であると言える。自覚症状のない臀部も触れてみると疲労の痕跡があった。また、臀部とつながる大腿(ふともも)の疲労も座りっぱなしという環境で疲労があったと思われる。これらの関連を利用できたため、少ない刺激で大きな効果を得られた。
[YMTY311001]
症例8
患者
男性 30代 群馬県
来院
2011年10月
症状の特徴と経過
臀部痛
数日前にベッドから落ち、腰を打ち付けた。それ以来、臀部(左右)に鈍い痛みが続いている。歩行などの日常生活は問題なし。動作時も特に悪化しない。
既往歴(これまでにした怪我)
特になし
治療の内容と経過
動作を観察しても痛みによる可動域制限もなく、一見しただけでは痛みの存在に気がつくことができない。そう意味では軽度。痛みには左右差はないが、患部に触れてみると左の方がこわばりが強い。打ち付けた腰部を調べてみると、胃兪で左右差があり左のこわばりが強い。三焦兪にも強いこわばりがあったが左右差は認められなかった。胃兪(左)、三焦兪(左右)に鍼をして10分待った。臀部の痛みは完全に消失した。
著しい効果が見られたツボ
胃兪(左)、三焦兪まとめ
発症のきっかけを患者自ら認識していたために、施術ポイントを絞るのが簡単であった。このように臀部に痛みがあっても原因が腰部にある場合もあある。逆に、臀部に原因があって腰部に痛みが出現する場合もある。因果関係は触診によって見えてくる場合もあるが、患者が語る「きっかけ」は大きなヒントとなることが多いため、覚えのある場合は確実に聞き出したいポイントである。
[YMTT291001]
症例7
患者
女性 40代 群馬県
来院
2011年10月
症状の特徴と経過
腰痛
朝起きると腰(左<右)に痛みがあった。仕事(農業)をしながら様子を見ていたが緩解する様子がなく、時間経過と共に悪化。日が暮れてから来院。来院時には、腰が伸ばすことができず常に前かがみの姿勢。歩く姿も痛々しく、クルマを運転してきたことが不思議であった(根性か…)。翌日も仕事を休むことができないという事情で何とかしてほしいとの要望。
既往歴(これまでにした怪我)
リウマチ(投薬で治療中)
治療の内容と経過
仙腸関節が動いていないと考え、仙腸関節にダイレクトに鍼をしたところ直ちに痛みが軽減。当時に直立姿勢が保てるようになった。さらに緩解させようと別の角度が狙った。アキレス腱を手技(活法)で緩めるとさらに痛みが軽減。続けて活法で梨状筋を緩めて骨盤の動きを改善させた。残っている背中のこわばり(痛み)を軽減させるために、膝周辺のツボを使った。仕上げに活法で股関節を緩めた。帰りは直立で歩いて帰えるまでに回復した。
3日後、2回目の来院。直立して歩いているが歩き方が不自然。患者本人の証言によると、初回の翌日は仕事ができるほどに回復し、徐々に状態がよくなっているとのこと。ただ、長時間の座位、中腰で物を拾おうとすると動作では痛みを感じるという話であった。鍼で坐骨周辺の筋緊張を緩めると痛みが軽減。中腰で物が拾えるくらいまで回復。さらに状態を改善させるべく、頚、背中のこわばりを鍼で緩めた。
著しい効果が見られたツボ
膀胱兪、梨状筋局所(右)、曲泉(右)、足三里(右)、坐骨の上部骨際まとめ
仙腸関節部位の直接鍼をすることで大きな変化が起こったため、仙腸関節に可動制限があったことは間違いないであろう。ただ、臀部、下肢、背部からアプローチすることでも症状が軽減したことから、仙腸関節に限局した問題ではないことも明らかである。この症例において、本丸とも言える仙腸関節に施術を行ったのは、普通の姿勢がとれることを最優先に考えたからである。まず、一時的にもである程度の痛みを緩解させることによって、その後の施術が円滑に進めることができた。そういう意味では順番が適切だったと振り返ることができる。
[YFAK251001]
症例6
患者
女性 20代 群馬県
来院
2011年2月
症状の特徴と経過
腰痛 鼡径部痛
朝起きると腰が重く硬くなったような違和感があった。同じタイミングで腸の調子を崩し下痢をした。異変が腰から鼡径部にまで広がってきたため病院に行った。処方された痛み止めを飲んだ。その翌日は念のため仕事を休む。少し回復したが、しゃがむ動作の時に痛みを感じる。生活上では、靴を履く動作、靴下を履く動作で痛みを感じる。
既往歴(これまでにした怪我)
腰痛(当院での治療歴あり)
治療の内容と経過
最初はベッドに腰掛けた状態で、動いてもらったところ特に痛みは出現しない。話をよく聞くと「靴下を履く動作で痛みが出る」ということなので、同様の動作をして痛みの出現を確認した。ただし、腰を前屈しただけでは痛みは出現しない。このパターンから、問題は下半身にあるわけではなく上半身にあると判断した。靴下を履く動作の時、腕は体の前方に伸ばすため、肩甲骨も大きく移動する。この時、上半身にこわばりなどの問題があると腰にその影響が及ぶことがある。試験的な意味も込めて、肩のツボに鍼を行った。その直後、靴下を履く動作を試してもらったところ、痛みが出現しない。問題が上半身にあることがわかったところで、発症直前の様子を詳しく訊ねたところ、普段は頚を露出しない服装であるが、発症の前日と4日前に、頚を外気にさらす服装をしたとのこと。後頚部を丁寧に触診してみると、頚の付け根あたりに冷えたツボを見つけた。透熱灸を行うと全身がすぐにポカポカと温まった。腰部と臀部も冷えていたので、足の外踝のすぐ下にあるツボに鍼をしたところ、腰部、臀部が温まり、腰の違和感がすっかり消失した。
著しい効果が見られたツボ
巨骨(左右)、陶道、申脈(左右)まとめ
この症例のポイントは「靴下を履く動作で痛む」ことと、発症と同時に下痢をしたことの2点であると思われる。これら2つの情報は問診なくしては得られなかった。腰痛と一口に言っても、どんな時に痛みを感じるのか、発症の直前や同時期に起こった事が大きなヒントを与えてくれる。そのヒントを基に、施術のポイントを探すことで的確に施術ポイントを絞り込むことができる。この症例の場合、原因は腰にない。その証拠に腰への施術を全く行うことなく全快した。
[YFTT160201]
症例5
患者
男性 30代 群馬県
来院
2008年8月
症状の特徴と経過
腰痛 臀部痛 坐骨神経痛
2月のスキーで無理をしたら腰に痛みが出現し、真っ直ぐ立つのが辛くなった。翌週もスキーに出かけたが滑れる状態ではなく諦めた。整体院に週1回−1ヶ月通って腰痛は軽減した。その後、野球をしたら再び腰に強い痛みが出現し、右脚にしびれと痛みを伴うようになった。次に整骨院に1ヶ月くらい通って痛みは軽減したが、臀部と脚部に張り感、ふくらはぎにしびれ、外踝の上に痛みが残った。他の治療法を試したいという気持ちで来院した。
既往歴(これまでにした怪我)
腰痛、右足首の捻挫
治療の内容と経過
症状は坐骨神経の走行上に出現している。そのため、多くの坐骨神経に関わりのある梨状筋の緊張を緩めることを第一の目的として施術した。初回の施術をした翌日、痛みのピークは軽減したが、しびれの範囲は広がった。翌々日は下肢の症状が軽減し、臀部の症状が最も気になるようになっていた。その後の施術で症状は軽くなりながらも、臀部と下肢を行ったり来たりと動いていた。4回目の施術が終わる頃には症状のほとんどのが消失し、疲れた時だけに症状が出るようになった。8回の施術で症状は全く出なくなった。
著しい効果が見られたツボ
腓骨頭周辺部の硬結−奇穴(右)、梨状筋−局所(右)、腓腹筋上硬結−奇穴(右)まとめ
典型的な坐骨神経痛の症状であると思われる。坐骨神経痛の多くは梨状筋(臀部の筋肉)のこわばりが原因であることが多く、この症例もその一例であると思う。ただし、梨状筋が単独でこわばっていることは少なく、関連した筋肉にもこわばりは見つかる。今回の症例は症状が出現する局所の施術が決め手となったが、周辺部位も見ていかないと解決できない例も多いので油断はできない。
[YMTK090908]
症例4
患者
男性 34歳 群馬県伊勢崎市
来院
2008年4月
症状の特徴と経過
腰痛
3年前、運動中に突然腰痛になり、コルセットを使用しながらストレッチとプールの運動で改善した。ただ、完全には回復せず2007年の年末からは処方された薬を服用していた。来院3週間前から出張で1週間薬を飲まなかった。すると腰痛が悪化。環境の変化によるものか薬を飲まなかったことによるものか、その原因は定かではない状況。腰部の痛みに加えて、腹部に強い張りを感じていた(特に右下)。食欲あり、便通に異常なし。痛みで立位と歩行の姿勢が歪む。夜間は寝返りの度に目が覚める。
他の症状
腹部の張り
既往歴(これまでにかかった病気)
特になし
治療の内容と経過
腹部を触診すると、左側面と臍の左が著しく緊張し硬くなっていた(自覚的に張り感が強いのは右下)。初診では、ふくらはぎの緊張を緩和させることを目的に施術を行った結果、痛みが10→4へ緩解した。結果、それまでできなかった左足の靴下を履く動作が可能に。しかし、翌日の朝から痛みが徐々に増強し、元の痛みに戻っていった。初診の5日後に再来院。腹部を触診すると、臍周辺と左側面の緊張は初診時に比べ大幅に解消されていた。目立ったのは左上腹部の張りだった(自覚なし)。この張りを解消させるべく施術を行った。3度目の来院時には大幅に腰痛が改善され笑顔で喜んでいた。右腰の痛みが残り、後屈時に痛みが増強する状態であった。腹部の緊張感を緩和させること最優先に処置を行った。その結果、歩行時には違和感がなく、痛みを探さないと気にならない程度まで回復した。
著しい効果が見られたツボ
合谷(左)、築賓(左右)、丘墟(右)、申脈(右)
まとめ
腹部の緊張を伴う腰痛は珍しくないが、この例はその中でも目立つものであった。1回目の施術では大幅に緩解したものの、すぐに症状が再発したのは腹部の緊張に対する処置が不十分であったと推察できた。2回目、3回目では腹部の緊張感に対処することで著しい治療効果を得られた。
[YMAS20080402]
症例3
患者
男性 50代 埼玉県川越市
来院
2008年3月
症状の特徴と経過
腰痛 ぎっくり腰
朝起きて、しゃがんだ瞬間にピリッと腰(仙骨周辺)に痛みが走った。仕事に行くことはできたが、痛みで仕事にならなかったため職場から来院。状態を詳しく確認してみると、広い範囲に痛みがあるものの最も痛みが強いのは右仙腸関節辺り。歩行で重心を右足に乗せた時、上体を右後ろに沿った時、前かがみ時に痛みが増悪することがわかった。3ヶ月前から左足に荷重した際に左内踝(くるぶし)に痛みが発生していた。仕事では、重い物を持つこともなく、発症時も腰へ負担をかけていなかった。
他の症状
特になし
既往歴(これまでにかかった病気)
ぎっくり腰(10年前)
治療の内容と経過
3ヶ月前から左足の内踝に痛みが出ていたことが今回の腰痛(「軽度のぎっくり腰」を言えるだろう)に関係していると判断した。そのために、左足首の調整を行った。しかし、明らかな改善が確認できなかったため、臀部と腓腹筋(ふくらはぎ)の筋緊張を取り除いた。すると痛みは半分程度に。3日後再来院。歩行時の痛みは改善されていたが、前かがみの際に痛みが残っていた。左足首の痛みも改善傾向であった。再び足首を診ると、左の内踝にわずかな腫れが認められた。再度足首の調整を行ったところ顕著な改善が診られた。続けて臀部の筋緊張を緩和させると症状は完全に消失した。翌日に電話があり「すっかり良くなった」とのこと。
著しい効果が見られたツボ
中封(左)、築賓
まとめ
ポイントは3ヶ月前からの足首の痛みだったようだ。この症例は、足首の異常が腰痛に発展したという典型例であった。そのため、足首を調整して腰痛を治すという教科書的な手法がそのまま活かせた。ただ、反省すべき点は初診時のツボの選び方だった。着眼点は間違っていなかったがツメが甘かった。精度が狂わなければ1回の施術で完治したかもしれない。
[YMTS20080324]
症例2
患者
女性 30代 群馬県
来院
2008年3月
症状の特徴と経過
腰痛 臀部痛 ぎっくり腰
14〜15年前から、約2年おきにぎっくり腰を起こしていた。1週間くらい前から腰に痛みを感じ、ぎっくり腰が起こりそうな雰囲気を感じている。姿勢によって臀部の辺りに電気が走るような痛みを感じる。痛みを全く感じない時もある。前屈、後屈ともに痛みが増悪するが、前屈の方がより増悪。
他の症状
左膝痛(内側)、頚こり、肩こり
既往歴(これまでにかかった病気)
気管支喘息、アレルギー性鼻炎
治療の内容と経過
腰痛の程度としては比較的軽いレベルのもので、器質的異常の可能性は低いと思われた。つまり、組織そのものに異常はないので、動作時に負荷のかかる場所を特定することがこの症状のポイントだった。施術前、痛みが出現しやすい姿勢を探すと前屈であった。この情報をもとにツボ選びを行った。施術直後に症状は消失した。
著しい効果が見られたツボ
照海(左右)、築賓(左右)、三焦兪(右)
まとめ
足首の調整で7〜8割の症状が消失した。残った2〜3割は腰部の骨を調整し解消させた。痛みを感じる部位と身体的な問題が別にある典型例であった。腰部深層筋(インナーマッスル)の機能が低下することで、臀部の筋肉(アウターマッスル)の過緊張(こわばり)を生んでいたと解釈できる。もし、臀部の筋肉を和らげるように処置していたら一時的な鎮痛効果だけだったように思う。
[YFNY20080310]
症例1
患者
男性 30代 群馬県
来院
2006年1月
症状の特徴と経過
腰痛 仙腸関節痛
2005年12月、雪下ろしの最中に腰に痛みが出現。部位は第5腰椎から仙腸関節にかけて。その後、痛みが悪化し、朝は前屈みができなくなった。翌年の1月13日、整形外科を受診しレントゲン撮影。軽度のヘルニアであると診断された。痛み止めの薬と湿布薬を処方されたが、悪化するばかり。夜寝ている間も痛む。1月6〜7日はのどに痛みがあった。
他の症状
特になし
既往歴(これまでにかかった病気)
特になし
治療の内容と経過
本人の自覚はなかったが、体には風邪による影響が残っていた。具体的には、体の表面に温もりがなく冷えていた。この冷えが筋肉をこわばらせ、腰痛を治りにくくさせていると考えた。腰へのアプローチは行わず、風邪の影響を取り払うことに専念した。初診後、直ちに効果が現れ腰痛が緩解。その後自然回復した。
著しい効果が見られたツボ
後谿(右)、申脈
まとめ
腰部のダメージは症状の割に小さく、回復を阻害している因子が問題であった。そもそも、体は自然回復すようにできている。その回復力を引き出すことで著しい効果が上がったという代表例である。もし、体表面の冷えを無視して、腰部の疼痛部位ばかりに目を向けていたら、これほど速やかに回復することはなかったであろう。
[YMMO20060114]
症例について
同じ病名や症状であっても効果には個人差があります。また、このページの症例は当院の経験であり、鍼灸の一般的な効果を意味するものではありません。