背中の痛み

すべての症例を掲載することが難しいため、一部を紹介します。

症例2 「胸椎椎間関節症」と疑われた背中の痛み 

患者

男性 10代後半

来院

2016年9月

症状と来院理由

1カ月前から、夜寝ていると左右の背中からあばらに沿って痛みが走り、2〜3時間おきに目を覚ますようになった。朝起きると、背中・あばらと痛みはあるが、次第に消えていき日中は気にならなくなる。整形外科で、レントゲン・MRIの検査を行うが、異常がみられない。「胸椎椎間関節症の疑いがある」と診断され、痛み止めで様子を見るよう言われた。しかし、数日経っても痛みが治まらないため、ネットで「胸椎椎間関節症」と調べ、東京の某鍼灸院に電話で相談した。すると、「治すには通院してもらわなければならない。群馬県からでは通院が大変だろうから、通える鍼灸院を探した方がいい。」という理由から、当院を紹介された。

鍼灸_胸椎椎間関節症_症例図_YMHS090916

治療と経過

夜間に痛みが見られやすいことから、長時間仰向けの姿勢をとる事で背骨を挟むように位置する脊柱起立筋に負担がかかり、あばらに沿って横方向に痛みが波及したものだと考えた。背中を触診すると、胃腸と関係の深いツボに反応が見られた。背中のツボの緊張(こわばり)を取るため、膝のツボに鍼をした。さらに上体を前傾させる時に腰に痛みを感じるため、足のツボで調整した。前回の治療後から、夜間に痛みで目が覚めることはなくなった。朝起きた時に、背中と腰に軽い痛みが残る程度まで改善。同様の方針で治療を行い、3回目の施術を終えた時点で、背中の緊張が完全に取れたので治療を終了した。

同時に治療した症状

腰痛

使用した主なツボ

陰陵泉LR 地機R

考察

背中をよく観察することで胃腸と関わりの深いツボの緊張をみつけ、胃腸のトラブルを疑った。尋ねてみると、普段から乳製品を取るとすぐお腹を下しやすく、最近は冷たいものを大量に飲むことが多かったとのこと。冷たい飲食を普段から控え、胃腸への負担を減らすようにお伝えした。鍼灸治療も効果的であるが、日常生活での負担を減らすことも早期の改善のためには必要である。症状の特徴をよく観察した後、そこから生活環境や嗜好を想像することで、ツボの作用に頼りきらない総合的な視野で治療を行うことができると言える。[YMHS090916]

症例1 圧迫骨折後に残っている背中の痛み

患者

男性 40代 埼玉県

来院

2011年11月

症状の特徴と経過

約2年前。スノーボードの転倒の衝撃で、頚椎7番の棘突起の骨折、胸椎11〜12番を圧迫骨折した。手術はせずに回復し、軽い運動は可能になっていた。ただ、小走りをしたり、姿勢によって胸椎11〜12番付近に痛みや違和感が出現する。スノーボードをするにも万全の状態とは言えない。上体を前後に曲げるのはつらいが、上体を捻ることは無理なくできる。頚椎の自覚症状はなし。

他の症状

特になし

既往歴(これまでにかかった病気)

特になし

治療の内容と経過

痛みや違和感がある部分は、ちょうど胸椎の11〜12番付近であった。脊柱起立筋の緊張は右が強く、他の部位とくらべて左右差が顕著であった。この左右差を解消するために、膝に鍼をすると、症状が軽くなった。もう一度触診をすると、浅い部分のこわばりが消失したために、深い部分の硬結が触診でよくわかるようになっていた。その部分に直接鍼をして緩めた。すると、腰に違和感が出た(一番気になる部分が解消されたので認識できるようになったと思われる)。ふくらはぎや太ももに裏側に鍼をして緩めると、腰の症状が消失した。背中から腰にかけての痛みと違和感が消失し、可動域も大幅に広くなった。

著しい効果が見られたツボ

陰陵泉(右)、殷門(左)、承山(右)、上巨虚(左)

まとめ

圧迫骨折をした部分は、ダメージを引きずっていたかもしれないが、傷のほとんどは癒えていたと思われる。問題は、胸椎11〜12番の動きが脚の方から制限を受けていたことであると思われる。どうしてそうなったのか、最初からそうであったのかわからないが、施術によって症状が大幅に改善したことから間違いない。頚椎も骨折したことを聞いた時は、頚椎や上部の胸椎からの影響を疑ったが触診したところ問題がなかった。目を脚に移すと問題点が見つかった。問診は重要であるが、問診と共に触診の重要性を改めて知ることになった症例である。[YMJK281111]

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